ラヴェルは生涯独身でしたが、子供好きで知られていました。この曲は友人の二人の子供たち(姉弟)が連弾演奏するために作曲されました。二人に献呈されています。ですから非常にやさしく書かれていて、実際ピアノ・ソロへの編曲もあるくらいです。とはいえ、初演は子供たちがまだ小さすぎたのでしょう、別の人が演奏しました。
逸話としては、終曲の最後にピアノのグリッサンドが力強く演奏されるのですが、(確か)姉が傷ついた指をラヴェルに見せたところ、ラヴェルは「私は残酷だね」と言って改変はしなかったそうです。子供好きでも自作はには手を入れない。そういう作曲家としてのラヴェルの一面が垣間見れます。
「マ・メール・ロワ」とは「マザーグース」のことです。ラヴェルはその中から5つを選んで曲にしました。どの曲も比較的短く、子供と一緒に連弾しても楽しいですし、子供とともに聴くのにも楽しめる組曲になっています。
第1曲 眠れる森の美女のパヴァーヌ
日本でも有名な「眠れる森の美女」からですね。ゆっくりとした短い舞曲です。
第2曲 親指小僧
「一寸法師」とも訳されますが、もちろん日本の昔話ではなく、帰り道の目印にパンくずを撒きながら森深く入っていった親指小僧が、パンくずを鳥に食べられてしまい途方に暮れている情景です。心細い胸の内と森の不気味な様子が描き出されています。
第3曲 パゴダの女王レドロネット
陶製の人形レドロネットはたくさんのおもちゃに囲まれて楽しいのやら、寂しいのやら。
第4曲 美女と野獣の対話
この話も日本では有名ですね。ディズニーアニメにもなりました。楽譜には個々のモティーフにセリフが書き込まれています。それで対話そのものを音楽にしたような曲です。美女の優しい声と野獣の荒々しい声と、ハッピーエンドの穏やかさが心にしみます。
第5曲 妖精の園
これは内容を知りませんでしたが、Wikiで調べたところ「「眠れる森の美女」から。眠りについた王女が王子の口づけで目を覚ますシーン」だそうです。静かに始まり、中間部の高音域の美しさに息をのみます。そして最後は華麗に幕を閉じます。
これら5曲をラヴェル自身が管弦楽編曲しています。そちらもとても楽しいです。最後の華々しさはラヴェルならではと言えるでしょう。さらにこの曲はバレエのために編曲されています。そちらの版は間奏が入っているので少し長めですが、同様に楽しめます。
ラヴェル:ピアノ曲全集 パスカル・ロジェ ¥2,983
既にラヴェルの曲で推薦済みのCDです。二枚組で「クープランの墓」も収録。
もう一人のピアニストのクレジットがありませんが…。「亡き王女のためのパヴァーヌ」「水の戯れ」「鏡」など名曲ぞろいです。
「すべてに良きフランス趣味が香り立つ模範的な表現」との評価。
シンセサイザーによる演奏です。左右のスピーカーの更に外側から音が聞こえる彼独特の世界です。
オーケストラによるバレエ版です。「ダフニスとクロエ」の全曲版も入った二枚組でお得です。
実は上記のうち「ダフニスとクロエ」と「ラ・ヴァルス」の入っていない一枚組で、なぜかお値段が高いです。入手しやすいと思い、念のため。
(2018.05.27追記)
話題のコンドラシン指揮のラヴェルがタワレコで在庫わずか。
こちらはSACDです。ハイレゾで聴きたい方に。ライブならではの迫力が期待できます。
これはちょっとした掘り出し物かもしれません。ライブですが絶賛されています。これはシベリウスの2番にも追加しなくては。
在庫わずかとのことですが、評価の高いコンドラシン指揮、フランス国立管弦楽団を推薦盤として追加しました。