「自作自演に名演なし」という中学時代の友人の言葉を以前に引き合いに出しまたが、「例外のない規則はない」という規則(堂々巡りが始まるのですが)もあります。レナード・バーンスタインはやはり「指揮者」だと思います。ですが、この曲についてはミュージカルの大ヒットに加えて映画も作られ、もはや知らぬ人はいないのではないでしょうか。「作曲家」としての名声も高いわけです。
しかし、実際のところバーンスタインは交響曲などシリアスなオーケストラ曲などを書いているのですが、そういった曲目ではそれほど認知されているとは思えません。演奏される機会も多いとは言えないでしょう。
この”シンフォニック・ダンス”を非常に客観的に指揮して、見事に命を吹き込んでいるという意味で、バーンスタインはここでは「指揮者」に徹していると思います。「作曲者は細部で表現しようとする。一方指揮者(演奏家)は全体で表現しようとする(「題名のない音楽会」で石井真木が編曲したベルリオーズ「幻想交響曲」を演奏したときに出た意見)」という傾向が確かにあると思います。でも彼は「全体」で音楽とストーリーの流れも追って、かつダイナミックな表現で聴く者を捉えて離しません。
「ウエストサイド物語」はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」に着想を得た、ポーランド系、プエルトリコ系、2つの非行少年グループの対立の犠牲となる男女の恋を描いています。社会背景がベースなだけに、原作のようにすっきりとした和解という結末にはなっておらず、いくらか後味の悪さが残されているのがミソか?とも思います。リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」のエンディングのようにわだかまりが残ります。
“シンフォニック・ダンス”では、劇中より以下の曲がチョイスされ続けて演奏されます。プロローグ、サムホェア(どこかに)、スケルツォ、マンボ、チャチャ、出会いの場面-“クール” フーガ、乱闘、フィナーレです。
あれ?「トゥナイト」は入っていないの?と思われた方。そうなんです、入っていないんです。ナンバー1ですよね。”ダンス”だから?でも「サムホェア」は入っています。んー、ここでハチャトゥリアンのことを思い出しまた。ハチャトゥリアンは剣の舞があまりにも有名になりすぎたために「書かなければよかった」と述懐しています。つまり「剣の舞のハチャトゥリアン」というレッテルを貼られてしまったことを嘆いていたわけです。もしかしてバーンスタインも「トゥナイトのバーンスタイン」と言われたくなくてあえて外したということはないでしょうか?考えすぎでしょうか?
おなじみの導入部に始まって、うっとりと夢を見るサムホェア、軽快な変拍子のスケルツォに続いて、これまた有名なマンボ、可憐なチャチャと出会いの場面(これはトゥナイトの変奏とも取れますね)、冒頭のクールの主題、悲劇的な乱闘、悲しみの中に得も言われぬ美しさをたたえたフィナーレ。
30分程度という演奏時間があっという間に過ぎていく、引き込まれる曲です。軽快でリズミカル、エネルギッシュでロマンティックですから存分に楽しめることでしょう。元気ももらえるはずです。
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー バーンスタイン:≪ウェスト・サイド・ストーリー≫から シンフォニック・ダンス<初回プレス限定盤> レナード・バーンスタイン ¥1,620
1982年の新録。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」と「前奏曲」第2番でピアノも担当しているようです。決定版とされるロサンゼルス・フィルハーモニックとの共演です。
こちらは1961年の録音です。やはりラプソディー・イン・ブルーではピアノを弾き、「パリのアメリカ人」、自作の「波止場」交響組曲が収められています。
実を言えばごく最近「
タワーと同じものです。
こちらは「波止場」ではなく「キャンディード」序曲が収録されています。より盛り上がれるかもしれません。
ちなみに1961年録音盤では「マンボ」とシャウトするところがなぜかドラムロールになっています(試聴機でもそうですね)。ニューヨークフィルの団員がシャイなのでしょうか?
新東名高速道路を走行中、とあるサービスエリアでWest Side Storyのブロードーウェイ・オリジナルキャスト版を400円で入手しましました(100円の割引券を使って)。やはりミュージカルは楽しいですね。
ボーナストラックとして、「シンフォニックダンス」が入っていたのが驚きでした。やはり「マンボ」とはシャウトせず、ドラムロールになっています。
バーンスタインがシャイとは思えないんですけどねー。楽しい演奏です。