ラヴェルというと華々しいオーケストラ曲やピアノ曲を思い浮かべますが、小編成の室内楽にも名品があります。これはまさにその一曲。作曲者27歳の若き日に書かれた弦楽四重奏曲です。
第一楽章の出だしが示している通り、大変穏やかで優しい美しい曲です。批評家の中には「ラヴェルはオーケストレーションは見事だが、メロディーメーカーではない」と断ずる人もいますが決してそんなことはないことを証明しています。
第一楽章は冒頭から水面にたゆたうような、宙に舞うようなゆったりとした主題が心和ませます。中間部ではいったん波が荒立つようになったかと思うとすぐ冒頭の穏やかさに戻ってきます。心地よく安心して聴いていることができます。寄せては返す波のように決して単調になることなく副主題が現れたり主旋律から派生したメロディーがいつしか眠りに誘うように消えていきます
第2楽章は元気なピチカートで始まります。無窮動的な動きのテーマがピチカートに支えられたり、ピチカートで演奏されたりしながら、次の緩やかな部分へと入っていきます。ここの変化の自然さは見事です。中間部はまさに波を描写したかのような断片を含み、安定した流れに身を任せていると感銘的眠りに落ちていくようです。再びテンポが戻ったかと思うとあっけなく曲は終わります。
第3楽章は「きわめて緩やかに」演奏されます。最初何の形もないようなとらえどころのない流れの中から、ひときわ美しい旋律が生み出されてきます。中間部で少し昂ったようなチェロと他の三楽器との対話がなされると、再びメロディーの形はあいまいになり、やや高揚していきます。それも静まり旋律と非旋律的な部分が交互に現れ、ハーモニーの美しさの極みの中で曲は閉じます。
第四楽章、この楽章は非常に生き生きとした活発な動きから始まります。5/8拍子という変拍子ながら違和感を感じさせないリズムパターンが刻まれ、その上でしきりと足踏み鳴らす輪舞も自然です。最後は終局にふさわしい高揚の中で誇らしげに曲を終えます。
全体的にリズムの明確な部分と不明確な部分が混在し、それがゆったりとしたリラックス感を生んでいるように思います。終楽章は「激しい」とはいえ心をかき乱すというのではなく、頬が紅潮するような温かさを持っています。
ただし、演奏する四重奏団によってかなり印象の異なることがあります。非常に鋭く先鋭的に演奏する楽団もありますし、古典的な演奏をする楽団もあります。前者は私はあまり好みではありませんが、人それぞれでしょう。
さて、よいCDがありますかどうか?
ドビュッシー&ラヴェル, ヴェーベルン: 弦楽四重奏曲<タワーレコード限定> ハーゲン弦楽四重奏団 ¥1,296
一押しです。混とんとしてしまいそうな箇所の表現や古典的でありながらビビッドな生気にビビッときます。体の疲れも取れていくようです。真摯でてらいのない演奏に敬服。
こちらは第二期メンバーの来日公演に合わせて日本初CD化とのことですが、若々しい軽やかさが魅力。明快な動き・絶妙なバランスをめでる評も。送料無料
個人的にはお勧めではないのですが、リリース時にかなり反響がありましたし、公正を期しての紹介です。さすがに「ベルク」の名を冠する楽団の演奏、と思ったのを覚えています。送料無料
なぜかもう一枚、アルバン・ベルク四重奏団からもう一枚。やたら安くて(送料は必要ですが)ストラヴィンスキーの小品が5曲加わっています。
Primeでなければ価格は同じ。でも送料分安いでしょうか。この名曲は様々な四重奏団が演奏していますから、お勧めとはいえ「唯一」ではありません。自分にぴったりの演奏を探す価値のある曲です。
ということで、こちらが第一期メンバーということですね。ラヴェルの「序奏とアレグロ」が入っており、ストルツマン、ゴールウェイといった豪華な顔ぶれ。
第二期。価格については「このサイトについて」をご参照ください。
なるほど、「A B Q」ですか・・・。曲目によっては素晴らしい演奏をするのですが、少し斬新すぎた気がします。
画像がありませんが同じものです。
かなり目立っているので気になっています。ドビュッシーの四重奏しか聴いたことがないのですが、そちらは線の太い軸のある演奏です。もちろん繊細さも持ち合わせていますが。TowerにもAmazonにもありますが未聴ということで、こちらにひっそりと置いておきますね。
ハーゲン弦楽四重奏団/ドビュッシー&ラヴェル,ヴェーベルン:弦楽四重奏曲 |
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