一見のどか?鋭く尖ったピアノ組曲。ジェフスキー:ノース アメリカン バラード

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どんな気分の時に聴いたらよいのか、というよりこの手の曲は集中して聴くことを要求します。4曲からなるピアノの組曲です。どの曲も変奏曲の形をとっていますが、元の曲の出どころははっきりしないようです。ただ現在でもストの時に歌われたりする、いわゆる何らかのメッセージ(抗議?)を発する曲のメロディーが主題です。そうした内容には関心がなくとも純粋に音楽として楽しむことができる曲です。彼の代表曲としては「不屈の民」変奏曲がダントツに有名です。とんがった「ゴールドベルク」変奏曲みたい、とでも申しましょうか。これも民衆の抗議ですね。

SampleMachine第三曲の原曲(ルイ・アームストロング)

ジェフスキー自身ピアニストでもありますが、このバラードは委嘱作品です。以下の4曲からなります。

1.恐ろしい思い出
2.あなたはどっちの味方?
3.川辺を下って
4.ウィンズボロ・コットンミルズ・ブルース

初っ端からおどろおどろしい曲名ですが、曲名とはまるで違っていてアメリカン・フォークソングといったところです。第3曲(原題:Down by the riverside)を高橋悠治さんが演奏しているのを初めてFMで聴き、途中はぐちゃぐちゃで何が何だかわかりませんでしたが、録音を繰り返し聴き、楽譜を入手して練習してようやく、どのように「変奏」されているのかがわかりました。そこまでしたのは、出だしと終結部がとても格好良かったからなんです。ぜひ弾いてみたいと思いました。きちんと弾くのははっきり言って難しいです。

SampleMachine第三曲

本来の各曲の出所については調べがつかなかった(英語のWikipediaでも出てませんね)ので、日本語のWikiを参照しますと、どんな状況で歌われるのかがおおよそわかります。どれも労働歌のなですね。一曲目はとてものどかな雰囲気で始まりますが、二曲目などは明らかに対立を意味するタイトルです。第三曲については高橋さんが「ある時期(ベトナム戦争のことと思われます)、反戦歌として歌われていた」と解説されていました。4曲目は歌詞が残っているのでWikiを参照してください。コットンミルとは初期の紡績工場のことだそうです。労使間の問題が関係しているのでしょう。

第一曲と第三曲は主題が最初に出ます。が、第二曲と第四曲は主題が最後に演奏されるという、少し変わった変奏曲です。たいていテーマは最初に演奏されますよね。

この中でやはり第三曲が美しいです。日本人にもなじみのある、なにかのメロディーと似ていることも理由かもしれませんが、何となく聞き覚えがあるように感じられると思います。テーマの提示が終わるとすぐに「わやくちゃ」になります。この部分の変奏はまず復調になること(ミヨーのようですね)。それに加えてメロディーのそれぞれの出だしの位置がずれること。時としては元のテンポが引き伸ばされたりします。これをまとめてやっているので、楽譜を見ないとどこがどうなっているのかわかりません。耳で聴き分けられる人はすごい人だと思います。速さ、音量の変化を繰り返し、続いて美しい響きが聞こえてきます。再びトーン・クラスターやポリリズムの混沌に入っていきますが、ややあってあの美しい響きがかすかにやってきます。そして最終変奏はすっかり調性感とリズムが戻ってきて、はじめ伴奏となるべく右手にジャズのアドリブのような動きが現れます。再び繰り返す際に、左手低音部にテーマが完全な形で戻ってきます。ここは本当に格好いいですね。そのまま終結するかと思いきや、短いささやくような不協和な響きで曲を閉じます。

第四曲は工場の機械の音をあらわしているのでしょうか?トーン・クラスターでガチャガチャとピアノが鳴り続けます。しばらくしてようやく彼方から主題がゆっくりとしたテンポで聞こえてきます。結構聴き取りにくいです(わざとそう書いてあります)。ガチャガチャが一段落すると、はいこれはブルースですね。まんまではないのですが、ブルースのようにも聴き取れる変奏がなされます。少しずつテーマがはっきりしてきます。騒音(?)が一段落したところではっきりとした主題が演奏されます。そしてこちらもこのまま終わるのかと思いきや、いきなりのクラスターの連続が始まり、それがだんだんと天井高く昇っていくように高音域へとシフトしていきます。と同時に音量も小さくなり、最後主題をクラスターで叩きつけるように弾いて、最後は消えるように終わります。いったい何だったんだ?でも面白い。そんな曲です。

時には集中して作品を聴くのも良いものですね。

ちなみに私の持っている楽譜にはノース・アメリカン・バラードとスクエアが収録されています。この二曲を作曲者自身が演奏したCDはまたしても廃盤の憂き目にあっています。

 

Rzewski: Which Side Are you On, etc / Lisa Moore リサ・ムーア 、 Lisa Moore (Bang on a Can) ¥2,116
Bang on a Can は現代音楽のエキスパート集団です。取り寄せ期間が長いのが少し心配ですが、一枚選ぶとしたら今はこれですね。

Rzewski Plays Rzewski – Piano Works 1975-1999 ¥10,618
自作自演BOX。7枚組ですがやや割高感が。もっともジェフスキーの曲はジェフスキー以外ない、という人もいるくらいですので。ただし、こういうBOXは続けて聴くものではありませんね。ちなみに「不屈の民」ももちろん入っています。36の変奏とカデンツァが含まれます。

CME Presents Vol.1 – Piano Celebration Various Artists ¥2,028
これは意外とよいかもしれませんね。残念ながら収録されているのは第三曲だけですが、近代から現代にかけての比較的「聴きやすい」曲が多く含まれていて、バリエーションも豊富です。一枚で楽しめそうです。ただし弾いているのは若手のピアニストたちです。ザ・センター・フォー・ミュージカル・エクセレンス(CME)はアメリカの音楽家育成機関です。

Rzewski: The People United Will Never Be Defeated! / Hamelin ¥1,717
国内流通仕様のものは高いのでこちらのみご紹介します。「不屈の民」を「あの」アムランが弾いていますが、第三曲と第四曲がおまけのようについてきます。これなら内容的に満足できるのではないでしょうか?

Rzweski: The People United Will Never be Defeated, 4 North American Ballads No.4 “Winnsboro Cotton Mill Blues” / Ralph Van Raat(p) ラルフ・ヴァン・ラート ¥1,142
こちらは「不屈の民」と第四曲のみ収録。安いですが送料がかかります。

Rzewski – Night Crossing – Works for One and Two Pianos Oppens, Ursula/Rzewski, Frederic ¥2,116
聞きなれない曲が多いですが、第四曲の二台ピアノ版が収録されているのが興味深いところ。一人はジェフスキー自身が弾いています。さすがの超絶技巧ピアニストも困難だったのか、それともさらに曲のスケールを大きくしたかったのか。たぶん後者でしょうね。

 

アマゾンには例の廃盤になっていたCDが\4,500くらいで扱われていました。スクエアは全曲聞けていないので安ければ私が欲しいです。

結局のところ、全4曲収録されていないのであれば、つまり、第三曲と第四曲だけでよければアムランの「不屈の民」が良い選択かもしれません。ご関心お持ちいただけましたら、Yahoo、楽天ともにありますのでポイントを計算して選んでください。

 


ジェフスキー(1938-) / The People Unites Will Never Be Defeated: Hamelin 国内盤 2,583円 送料無料
「あの」アムランの「不屈の民」です。タワーで紹介した通り、第三曲と第四曲が収録されています。こちらは国内版。下記はUK版です。


ジェフスキー、フレデリック(1938-) / [ジェフスキー:ピアノ作品集]不屈の民「変奏曲」、ノース・アメリ 2,905円 送料無料
UK版です。なぜかこちらが高いですね。「ノース・アメリ」とついているのといないのと違うのでしょうか?それはないと思いますが。

 

 

リサ・ムーアの全曲か、アムランの二曲のみか。または第三曲のみですが「CME」はCDコレクションとしては良い選択だと思います。

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