スティーブ・ライヒの世界-その7。光を探し求めて。ライヒ:「砂漠の音楽」

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だんだんと陽が短くなり始め、肌寒い日もでてきました。あんなに夏の暑さに苦しめられたのに、やはり寒くて暗いのは苦手だなぁと勝手なことを思ったりします。そんな中、苦悩の内に一筋の光が差してくるような音楽を一曲。

ライヒ(そろそろ正しい発音、ライクとすべきかもしれませんが)のオーケストラと合唱のための作品です。最初期にはセリフが音楽に昇華されていましたが、パルスが重要な位置を占めるようになってからは、「声」が言葉ではない「音」として使われる作品に移行していきます(「18人のミュージシャンのための音楽」など)。それがこの作品では歌詞を持った「歌」が楽曲の中心をなしています。もちろんパルスも発声するのですが全体から見るとそれはごく一部です。

抜粋です。Iの終わり近くからⅢaが始まるところまででしょうか。

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集中力を高めよう。シェーンベルク:「管弦楽のための5つの小品」

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今回は、時代は前世紀初めのものですが、内容的には現代音楽に分類します。とはいえ、ハチャメチャに大騒ぎをしたり気をてらったりしたものではありません。この曲を聴くと非常に集中力が研ぎ澄まされる気がします。

シェーンベルクは、12音技法(12の音程を均等に使った音列をもとに作曲する)の創始者とされ、「無調」の作曲家ともされますが、実際のところ、彼は調性を消し去ろうとしたのではなく、むしろその逆に拡張しようとしたのだと思います。それまでの、ハ長調、ニ短調といった枠ではなく、音楽の瞬間瞬間の調性感を追求していったのではないかと考えられます。もっとも彼自身、その理念が充分に受け入れられる可能性を低く見ていて、大曲を途中で放棄してしまったりもしています。ですが、現在の私たちの耳は複雑化した調性にかなり対応できているのではないかと思います。

この作品は彼の比較的前期の作品で、後に改訂版が作られました。

サイモン・ラトルの指揮で(いかにも何かが起きそうな第一曲「予感」から始まります)

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スティーブ・ライヒの世界-その6。複雑化する和声。ライヒ:「スリー・ムーブメンツ」

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年代を追って紹介しているわけではないのですが、ハーモニーが比較的複雑で、不協和音とはいかないまでも、どちらかというと短調に傾いている時期の作品です。タイトルの通り三つの楽章からなります。リズムは比較的単純で、一連の「フェーズ」シリーズのように少しずつ少しずつずれていくということはなく、特にこの作品では全体が一斉にリズムを変えていく体を成しています。

第1楽章

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冬のぬくもり。イーノ/バッド:「The Plateaux of Mirror」

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今日になって急に寒さが増してきました。明日から12月。いよいよ秋から冬へ向かいます。紹介するCDはジャンルで言うと”アンビエント”ですが、ここではとりあえず現代音楽のカテゴリに分類しますね。邦題は「鏡面界」、直訳すると”鏡の高原(複数形)”といったところでしょうか。高原より台地の方がはまるでしょうか?

どちらかというと冬を思わせるような音楽です。それがちょうどビバルディの「冬」の第二楽章のように、寒い季節にも何か温かみを感じさせてくれるような、ほっと一息つけるような曲集です。今時分聴くのにちょうど良いような気がします。寒さに向かうのは憂鬱なものですから、温もりが欲しいですよね。

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音楽って何だ!武満徹とお友達。クセナキス:「テルレテクトール」

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今回はまた現代音楽です。というともう聴く気がない方もおられるかもしれませんが、以前に紹介した「ノモス・ガンマ」によく似た演奏形態で、はるかに耳当たりの良い曲です。といっても、それほど轟音ではないという程度ですが。

静謐な音楽で知られる武満徹と友人で尊敬しあっていたとはちょっと意外ですが、どちらも独立系、つまりアカデミックではない道をたどってきた作曲家といえるでしょう。

ライブ映像です

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打楽器独奏曲の一押し。テンション・アップ、集中力アップにも。クセナキス:「サッファ」

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集中力が途切れがち、ついぼんやりしてしまう、といったときに注意深く聴くと思考が鋭敏に研ぎ澄まされていく、そんな曲をご紹介します。全体に音で埋め尽くされながらも、中間部は日本の「間(ま)」を感じさせる作品です。打楽器独奏曲の名曲中の名曲です。

時代とともに変遷してきたいわゆる西洋音楽同様、打楽器音楽とて「ひとくくり」にすることはできません。紹介いたしますクセナキスの楽曲はあくまでもクセナキスなのです。楽譜はこんな感じです。

そして鳴っている音はこんな感じ。

彼女の演奏は演出的な面もありますが、「間」の取り方と集中力に気迫が感じられます。終結も見事。

お手本的な演奏はこちら。どのように演奏しているかもよく見えます。

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音楽のバッド・ボーイ再び。ジョージ・アンタイル:「ジャズ・シンフォニー」

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「バレエ・メカニック」で紹介した”Bad boy of Music”ことジョージ・アンタイルです。その時にも触れましたが「ジャズ・シンフォニー」をもう少し詳しく紹介したいと思います。

「ジャズ・シンフォニー」と聞くと大概の方は「ああ、ガーシュウィンみたいなものかな?」と思われると思います。確かに似ている部分があるかもしれませんが、全体を通して聴くと大方の期待を見事に裏切って、まずはあっけにとられてしまうこと間違いなしです。

始まりは「パリのアメリカ人」?と思えるような協和音で始まるのですが、突然調律が狂ったように不協和音になだれ込んでいきます。リズムの足取りもおぼつかなくなり、そうですね、昔のレコードをご存知の方なら、レコード針があちらこちらに飛び跳ねているのではないかと思うほど「秩序ある混沌」にはまっていきます。

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「解答が存在しない」のか、「返事がない」だけなのか、それが問題だ。アイブズ:「答えのない質問」

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英語の題名は「Unanswered question」なので、単に答えが返ってこないと言う意味に取れそうですが。比較的聴きやすい(美しい?)現代音楽です。

アメリカ人作曲者のアイブズはきちんと大学で音楽教育を受けながらも、「不協和音では食べられない」と言って、生計は保険会社で立てながら、「日曜作曲家」に徹した人物です。作品数は膨大で、しかも多くの実験的な事柄をメインストリームから外れたところで早くから始めていました。そのため生前はあまり認められていたとは言えませんが、晩年には評価を受けるようになりました。

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