「バレエ・メカニック」で紹介した”Bad boy of Music”ことジョージ・アンタイルです。その時にも触れましたが「ジャズ・シンフォニー」をもう少し詳しく紹介したいと思います。
「ジャズ・シンフォニー」と聞くと大概の方は「ああ、ガーシュウィンみたいなものかな?」と思われると思います。確かに似ている部分があるかもしれませんが、全体を通して聴くと大方の期待を見事に裏切って、まずはあっけにとられてしまうこと間違いなしです。
始まりは「パリのアメリカ人」?と思えるような協和音で始まるのですが、突然調律が狂ったように不協和音になだれ込んでいきます。リズムの足取りもおぼつかなくなり、そうですね、昔のレコードをご存知の方なら、レコード針があちらこちらに飛び跳ねているのではないかと思うほど「秩序ある混沌」にはまっていきます。
演奏家によってかなり速度変化や表現に違いがあるのですが、試聴機の音源はその中でも割と気に入っているものです。本当を言うとあまり速度を落とすことなく一気に終わりまで突き進んでもらいたいのですが、ピアノパートの難しさなどもあり(これは相当に難しそうです)、テンポダウンする演奏が多いです。
1970年代にラインベルト・デ・レーウの指揮するオランダ木管合奏団(弦楽器も金管楽器も打楽器も入っていましたが)の演奏をNHK・FMで聴きましたが、それはもう本当に大盛況で、聴衆の興奮がステレオを介して伝わって来て感動したものでした。この時に演奏されたもう一つの曲が「バレエ・メカニック」だったのです。
ピアノパートについて書きましたが、これを実際に弾きながら作曲したのであれば、アンタイルは相当ピアノが上手だったはずです。2ビートを刻むトロンボーンの音がメロディーを吹くトランペットと複調になっていて調子っぱずれに聞こえたり、楽譜通りにあっているんだか間違ったんだかわからないような部分があったり、とにかく楽しいです。シンフォニーといっても単一楽章の10分足らずの短い曲です。
実はこの曲も版がいろいろあって(この作曲家の特徴なんでしょうか)もう少し長いものもあります。ですが、やはり最終稿がきりりと引き締まった良い楽曲だと思います。
ちなみに、ピアノのための「ジャズ・ソナタ」という曲もあって、これは「ジャズ・シンフォニー」の中に含まれている部分を取り出している、さらに短い曲です。こちらもYouTubeで見つかるはずです。楽譜付きのもありましたので、相当に変拍子が使用されているのがお分かりになると思います。
曲の最後は出だしと同様まとも(?)に戻って、「ラプソディー・イン・ブルー」のように盛大に終わります。
(17/05/23 追記)
George Antheil’s Ballet Mecanique New Palais Royal Orchestra 、 モーリス・ペレス ¥2,028
ジャズ・シンフォニーとバレエ・メカニックがどちらも原典版で収録されています。
17/06/29発売です。こちらのジャズ・シンフォニーも原典版。違いは、たいてい一台のピアノを使った新しい版で演奏されるところですが、原典版はピアノが三台になるそうです。聴きものに違いありません。
(ここまで追記)
上記の「大植英次」盤です。他の曲目については聴いたことがないのでわかりませんが、YouTubeで試聴できるので、感触が良ければぜひどうぞ。
以前も紹介しましたが、この最後に収録されているのがライブ盤であれば、まず間違いなくあの大熱演なのですが、確かめることができません。他の収録曲があまりにもマニアックなので・・・。無保証です。
(17/05/23追記)
ジャズ・シンフォニー(3台ピアノと管弦楽版)、ピアノ協奏曲第1番、世界の首都、ルンバ フランク・デュプレー、シュテフェンス&ラインラント=プファルツ州立フィル、他 会員価格¥2,116
こちらはHMVから入手できます。タワーで紹介した、2017/06/29発売のものです。三台のピアノを擁する原典版。そそられます。
(ここまで追記)
新譜が出るようです(一つは既に出ていましたが)。
追加いたします。