集中力を高めよう。シェーンベルク:「管弦楽のための5つの小品」

Denis AzarenkoによるPixabayからの画像
このページにはプロモーションが含まれます。

今回は、時代は前世紀初めのものですが、内容的には現代音楽に分類します。とはいえ、ハチャメチャに大騒ぎをしたり気をてらったりしたものではありません。この曲を聴くと非常に集中力が研ぎ澄まされる気がします。

シェーンベルクは、12音技法(12の音程を均等に使った音列をもとに作曲する)の創始者とされ、「無調」の作曲家ともされますが、実際のところ、彼は調性を消し去ろうとしたのではなく、むしろその逆に拡張しようとしたのだと思います。それまでの、ハ長調、ニ短調といった枠ではなく、音楽の瞬間瞬間の調性感を追求していったのではないかと考えられます。もっとも彼自身、その理念が充分に受け入れられる可能性を低く見ていて、大曲を途中で放棄してしまったりもしています。ですが、現在の私たちの耳は複雑化した調性にかなり対応できているのではないかと思います。

この作品は彼の比較的前期の作品で、後に改訂版が作られました。

サイモン・ラトルの指揮で(いかにも何かが起きそうな第一曲「予感」から始まります)

シェーンベルク自身は自分の作曲方法を評するに「12音技法」という表現は使っていないようです。先にも書いた通り彼は調性を非常に強く意識して曲を書いています。いわゆる「音列操作」の方法を生み出した(彼が最初ではないですが)のは作曲の「効率」の問題ではなかったかと思います。

さて、5つの曲は以下の通りです。

1.予感
唐突に始まり、いかにも何かが始まりそうな、やや不安げな様相を呈しています。これくらいの感じなら映画音楽でも今ならありそうな感じですよね。小さな爆発を繰り返し(演奏者によってはかなり激しい)、予感はだんだん強まっていくようです。が、盛り上がると見るやスーッと終わってしまいます。あくまでも予感に終始するのですね。映画で言えばドキドキ・ハラハラ?

2.過去
この曲を瞬間瞬間で捉えると、シェーンベルクが狙っていたのが不協和音ではなく、これまでのどんな分類にも分けられない調性感であることが感じられるのではないでしょうか?全体は静かに進行し、メロディーというものがあるとすれば、それは楽器から楽器へと受け渡しされ、後半には時が刻まれていくような部分があり、再び新たな和声の中でメロディーが切々と歌われます。冒頭に戻ったのちどこへともなく消えていきます。

3.色彩
ここでは音色が重要な要素を占めています。曲自体は一層静まり返ったものとなり、ラインを構成するのはメロディーではなくカラーです。ゆったりとした流れの中、時に様々な色彩がきらめきます。しばらくすると様々な色彩を帯びた音色が織りなす音のベールに包まれて曲は終わります。

4.急展開
全曲の中でやや激しいのはこの曲でしょうか。突然の展開によって曲は始まります。その後も弱奏を挟みながら筋立ての急展開が新たな調性で描かれています。そして、強奏であっという間に曲は終わります。

5.序奏付きレチタティーボ
タイトルの意味は正直のところあまりよくわかりません。第4曲に次いで強い音響が響きます。様々な試みがなされているのがわかります。「歌」も感じられます。目立った特徴はないのですが長さも短く曲としてのまとまりも非常に美しいのではないかと思います。小品集を結ぶのにふさわしい曲です。

こうした曲を聴くにはある程度耳の慣れというものが必要かもしれません。ある人々は現代音楽というだけで逃げてしまいますが(確かに逃げ出したくなるような曲もありますが)、とても損をしていると思います。言ってみれば音楽のピーマンなのかもしれません。この味のおいしさが分かるようになると音楽の平野がずっと広がるのにと。


【CD】 The Second Viennese School – Schoenberg, Berg, Webern<期間限定盤> サイモン・ラトル 、 バーミンガム市交響楽団 、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ¥2,294
さすがに「小品」のため、なかなかうまいカップリングのCDが見つかりません。こちらの「新ウィーン楽派」と銘打った5枚組ですが、内2枚は調性のある「グレの歌」で、ブラームスのピアノ四重奏曲をシェーンベルクがオーケストラ編曲したものなど聴きやすいものも含まれています。

後はAmazon Music  Unlimitedでは、曲目単位で聴くこともできます。


ラトル/シェーンベルク:5つの管弦楽曲 1,418円(送料別)


サイモン・ラトル/シェーンベルク:5つの管弦楽曲 【CD】 1,372円(送料別)
どちらも同じ盤ですが、送料次第で価格に差が出ます。

LPです。くれぐれもお間違いのないように。結局アナログの方がハイレゾだったわけで、CDに切り替わったときの騒ぎはいったい何だったのだろうと思います。

結局、ラトルのCDとドラティのLPの2種類になってしまいました。自分としては響きの繊細なLPで聴いてみたいなと思います。録音自体は古いようですが、もちろんステレオです。詳細は当該ページにてご確認ください。

(Visited 67 times, 1 visits today)