- どんな曲?
ショスタコーヴィチを初めて聴いてみたいという人がいたら、絶体にお勧めしません。やっぱり第5番を最初にお勧めします。こちらは彼の最後の交響曲となりました。交響曲というよりは大きな室内楽のようだと評する人もいます。確かに全体がドーンと鳴っている部分は比較的わずかです。それまでの彼の交響曲や、他のクラシックのパロディーがちりばめられているのですが、楽しいというよりはやや不気味で、印象としては暗いです。と書くと「5番だってそうでしょ?」といわれそうですが、意味合いが違うんです。政治的な圧力が取り除かれて自由に作曲できるようになったショスタコーヴィチの集大成、というと大げさですが、不可思議な音たちと戯れる彼の姿が目に浮かんできます。打楽器も活躍しますよ。
- どんな時に聴くとよい?
この質問には困ってしまいますね。本当は一心不乱に聴いてほしいのですけど、例えば、なぜだか何も考える気がせずにボーっとしてしまうことがありますよね。そんな時に流しておいたら良いのではと思います。音響と一緒に自分もどこかにたゆたって行って、最後に我に返る。そんな感じでいかがでしょう?戻ってこれないと困りますけど。
とにかく不思議な曲で、はっきりわかる引用もあるのですが色々仕掛けがありそうで、解説本などを見ないと細かいところまではわからないかもしれません。私はほとんど読んだことがありません。自分の好きな作曲家を挙げよと言われれば確実にショスタコーヴィチが入ってくると思いますので、思い入れたっぷりに書いていてもピンボケのところもあるかもしれません。饒舌になってしまいますし。
第1楽章:二度ベル(グロッケンシュピール?)が打ち鳴らされてテンポ良く、静かに曲は始まります。歌って歌えないことのないメロディーはあります。そういう意味では決して前衛ではありません。ところがそのメロディーがいつの間にかロッシーニのウィリアムテル序曲になってしまってびっくりします。その昔「ショスタコーヴィチの証言」という本が出版されて、ここは深夜のおもちゃ屋(箱?)のイメージだ、と当人が語ったことになっていますが、聴き手は当時子供であったこともあり、信ぴょう性に欠けるとかガセネタだとか騒がれた時期がありました。その後はあまり言及する人もいないようですので、史料価値としては軽視されたのでしょうね。でも、この楽章を子供にわかりやすく説明するとしたら、「深夜のおもちゃ屋」はいい表現かもしれません。元気よくしめます。
第2楽章:アダージョで始まります。金管楽器が導入部を演奏します。幾分の明るさも伴っているのですが、チェロのソロの切なさが胸を打ちます。トロンボーンのソロ、ヴァイオリンのソロと引き継がれ、ラルゴに入ると木管楽器のの暗い旋律で、再びソロを取るトロンボーンのソロからは葬送行進曲の様な感じも受けます。確かに大きめの室内楽のような感じで、すべての楽器が鳴っているようなシーンはありません。トロンボーンがひときわ大きな声で歌って、非常に繊細になったかと思う矢先、交響曲らしい響きがやってきます。ここを解放と取るか悲痛と取るかは人それぞれだと思います。弦楽合奏でなだめるような豊かな響きが奏され、ホルンがそこに加わります。最後は時を刻むようにティンパニと低音金管楽器の最弱奏で次へと続きます。
第3楽章:いわゆるスケルツォなのですが、毒々しい感じがします。クラリネットのひねくれたような飛び跳ねるような旋律がちょっと不気味。愉快といえば愉快。とても快活な音楽なのですが、この旋律は相当音感の良い人でないと歌えないだろうなと思います。木琴の乱入で一段落です。
第4楽章:どう聴いてもワグナーからの引用としか思えない旋律が静かに低音楽器で演奏されます。それでそのまま続けるのかと思いきや自分のメロディーへ変化、そしてまた戻りそうになってさらに変化。一体どういうつもりで書いたのか想像するしかないですが、他にもいろいろ引用があるらしいので、ショスタコーヴィチが影響を受けたり尊敬している音楽が随所に顔を出すのではないでしょうか?中間部分では長いクレッシェンドを経て再びフルオーケストラを駆使した賛歌を壮大に鳴らして、スネアドラムの一撃でデクレッシェンドしていきます。再びワーグナー。最後はセルフ・パロディ(?というか引用)です。しばらくの間気付きませんでした。交響曲第4番のエンディングとそっくりなのです。でも、第4番の終結部が持っている闇を抱えた悲壮感とは全く異なり、静かに天高く舞い上がっていくような明るさと軽さがそこにはあります。この部分のパーカッションは本当に素晴らしいです。再弱音で長~いあいだ音程を弦楽器が弾いていますが、最後の一打で長調の和音に帰結するのです。
どういうこと?なんでムラヴィンスキーが手に入らないの?確かに好んだレパートリーではなかったようですが、彼を差し置いて…。
ショスタコーヴィチ:交響曲 第15番 クルト・ザンデルリング 、 ベルリン交響楽団 ¥1,080
非常に評価が高いです。私としては少しゆっくりかと思ったのですが、ムラヴィンスキーが速過ぎるのかも。感動を呼ぶようです。
指揮者としてはまだ若い巨匠でしょう。ハイブリッドなので高いのが玉に瑕ですね。
こうなったら全曲揃えてしまう?何故か指揮者もオーケストラもばらばら。私は好みの一枚を積み上げていくのが好きなのであまり全集は買わないのですが、とにかく揃える、という方がおられた場合に備えて。ちなみに、第15番は息子のマキシム・ショスタコーヴィチが振っています。
そう、Amazonには品質の高い中古市場があります。状態の非常に良いものもあるようですので推薦に含めます。
こちらはグッと安くなりました。ハイブリッドですからね。
フェドセーエフはいくらかムラヴィンスキー寄りかと思いました。オケは最高です。
タワーでべた褒めだったこの一枚。こちらでも高評価。プライムなら安いです。
やはり、挑戦するのがなかなかに勇気がいるのでしょうか?あとは、今は何でもコマーシャルベースに乗るかどうかが重要な時代なので、制作会社としては売れ行きを心配しているのかもしれません。しかし、ゲルギエフなどは既に入手困難になりつつあります。もちろんムラヴィンスキーらと共に再び販売されるのだと思いますが。
聴く方も生半可ではいられません。好みは大きく割れると思いますが、ショスタコーヴィチに「慣れたら」聴いてみる価値はあると思います。お勧めは、5-6-1-10-9-7-4-15の順で聴いて行ったらどうでしょう、大体のところですけれど。あくまで私の主観です。ここに挙げなかった番号がつまらないという意味ではありません。11,12もとてもいいです。意外ともっと早く聴いてもいいかもしれませんね。
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