楽しい気分を味わいたいならお勧めです。もともとは歌劇的なものでしたが演奏機会は少なく、こちらの組曲は時々取り上げられます。中にはまじめな曲も入っていますが全体としては、はじけた楽しい組曲です。コダーイはバルトークと並び称されるハンガリー音楽の研究者ですが、バルトークよりも研究者としての側面の方が大きいように思われます。
ちなみにハンガリー語圏では名前は日本と同様「姓・名」の順で表記するのだそうです。それでこの作曲家も一般に「ゾルタン・コダーイ」と書かれていますが「コダーイ・ゾルタン」が国内の呼び方になります。ということは「ベラ・バルトーク」ではなく「バルトーク・ベラ」になるのですね。ちょっと違和感があります。
さて、劇音楽の中から6曲を抜粋して構成された組曲です。
第1曲:前奏曲。おとぎ話は始まる
ハンガリーには「聞いている人がくしゃみをすれば、その話は本当だ」という言い習わしがあるそうで、曲は大きなくしゃみを模した音型で始まります。その後はまじめな音楽が続くので、「楽しいのこれ?」となるかもしれませんが大丈夫です。ある意味曲は大げさに盛り上がっていき、頂点に達したのち静かに短く閉じます。
第2曲:ウィーンの音楽時計
時計というよりぜんまい仕掛けの機械のようです。弦楽器は参加しません。心地よいリズムにリラックスします。
第3曲:歌
ヴィオラがハンガリー民謡をソロで奏でます。弦楽の伴奏でオーボエ、がメロディーを引き継ぎ、少しテンポを上げて今度はメロディーをホルンが演奏し、この辺りから民族楽器のツィンバロンが活躍します。伴奏役に徹していますが非常に雰囲気があります。
第4曲:戦争とナポレオンの敗北
ここでも弦楽器は使われていません。仰々しい戦闘の様子が描かれますが、最後はハーリがナポレオンを捕虜にし、とぼとぼと歩くナポレオンが描写されます。
第5曲:間奏曲
元気のいいハンガリー民謡です。ツィンバロンも張り切って演奏しています。中間部に入るとテンポを落としてホルンの柔らかなメロディーが弦楽器へと受け継がれて行きます。フルートによるメロディーも美しいです。再び元に戻って威勢良く曲を終わります。
第6曲:皇帝と廷臣たちの入場
オーストリア宮廷に入場してくるのは皇帝になった我らがハーリ。絢爛豪華というよりも、とにかく大げさに陽気。最強奏で全曲を閉じます。
とにかく元気なこの曲。ショルティが良く取り上げていることに気が付きました。でもやはりコダーイを広めた功績はフリッチャイにあるでしょう。
コダーイ、バルトークに力を入れていたフリッチャイの最後期の演奏です。
セル唯一の録音。録音も秀逸とされSACD盤としての聴取にお勧めです。シンフォニエッタの推薦盤にもなりそうですね。
なぜここに「ハーリ・ヤーノシュ」が入ってくるのかは不思議ですが、セールでずいぶん安くなっていますので。2枚組です。1枚目はストラヴィンスキー、2枚目の最初が「ハーリ・ヤーノシュ」です。「エレクトラ」は抜粋です。
この際コダーイを味わってみたいという方にお勧め。惜しむらくはモノラル録音であることでしょうか。