スメタナに続いては、ドボルザークの「スラブ舞曲」です。
この曲集は、「ハンガリー舞曲」で成功を収めたブラームスの勧めによって書き始められました。
いずれもセル指揮、クリーブランド管弦楽団です。
第1集と第2集の間には8年ほどの歳月が経っていますが、どちらもすばらしい曲集です。
二つの曲集はそれぞれ8つの曲が含まれていて、どちらも最初ピアノ連弾のために書かれ、その後すぐ作曲者自身がオーケストラ版に編曲しました。
どの曲も比較的短いので、アンコール曲として用いられますし、結構いろいろなところで使われているので耳なじみの多い曲も沢山あると思います。試聴機の曲は日本人好みの名曲と言えるでしょう。
ただし、コンサートで全曲通しての演奏会は最近ではあまり聞いたことがありません。もしかするとピアノ版の方が可能性としては高いかもしれません。演奏会にもブームがありますから。
この曲を作曲するように勧めたブラームスは、自分が「ハンガリー舞曲」で成功しているので、経済的に困難を抱えていたドボルザークに働きかけたようです。
とはいえ、ブラームスの曲は<編曲>として世に出されたものです。彼はいわゆるハンガリー民謡を収集しては記録していきました。本人はそのつもりでした。しかし、収集に協力した音楽家はハンガリー民謡ではなく、ロマの音楽をブラームスに聴かせていました。ですからブラームスは一生懸命にロマの曲を集め、編曲し、「ハンガリー舞曲」と題して発表したわけです。
もちろんこれはこれで名曲なのですが「ハンガリー舞曲」と称するのはどんなものでしょう。他にロマの曲に取材、影響されたものとして有名なのは、サラサーテの「チゴイネル・ワイゼン」やラヴェルの「ツィガーヌ」といった名曲があります。
ハンガリーの作曲家としてバルトークは「これ(ブラームスの)はハンガリーの音楽ではない」というわけで、自ら収集した民謡をもとに舞曲などを残しています。コダーイもハンガリーの作曲家・研究者で、民謡の収集に熱心に取り組みました。
ブラームスの誤解がちょっと笑える「ハンガリー舞曲」ですが、聞いたことがないという人がいないくらいの有名曲になってしまいました。
一方、「スラブ舞曲」はすべてオリジナルです。私はどちらかというとオーケストラ版の方が好みですが、連弾には連弾の良さもあります。舞曲集ですので、リラックス、元気が出る、浄化、楽しい、泣けるとほとんどが当てはまってしまうのですが、これはそれぞれの曲がスラブ風でありつつ様々な雰囲気を持っているからです。
全16曲からお気に入りをいつでも聴けるようにして、リラックスしたり、やる気を出したりするのに役立ててください。
今回はオケ版の推薦です。入手可能なものとなるとなかなか難しいのですね。
こちら、チェコ・フィルを育て上げたというターリヒの指揮する決定版。ただしモノラルで、音の欠落を複数の複製からデジタルリマスタリングしたもの。1935年録音ですから音質より音楽を求める方に。
全曲録音のものがタワレコでは見つからず、このジョージ・セルのボックスセットに一枚のCDとして含まれています。試聴機のものでしょう。49枚組ですし幅広い選曲ですのでセル好きなら外したくないですよね。それにしても単発では売りにくいのでしょうか?こちらの録音は1960年代のものが中心となります。
アマゾンには比較的単発物があり、こちらはチェコフィルとノイマンで、内容、音質ともにお勧め。録音は1985年ですがPCMデジタル録音。レコード芸術特選、朝日試聴室推薦。今回のお勧めでは一番バランスがとれているかも。
通をうならせるクーベリック版。個人的にはプレヴィン版も推しますが見つからず。プレヴィンやセルより良いとの評も。民族色がより濃く出ていて好みは別れそうに思います。
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