「テヒリム」とは聖書の中の一冊「詩編」のことです。
この曲は「詩編」からの短い部分を歌詞として使っています。四つのパートからなっています。
この頃からライヒは歌詞のある曲に取り組みます。言い換えるとメロディーラインのしっかりした音楽を作り始めたということになります。伴奏の打楽器の刻むリズムはかなり複雑に聴こえ、あまり法則性が見つかりませんがライヒのことですから何かのパターンがあるのでしょう。
いくつかの打楽器と、わずかな管弦の伴奏のいる室内楽的な編成で、友人たちが部屋に集まって演奏しているような雰囲気です。
第一曲では歌詞の内容がワンフレーズで歌われ、四人の女性の歌い手が一人づつ加わりますが(出だしからいきなり歌)、同じタイミングではなく、それがカノンのようにずれて歌われるために徐々に複雑な響きになっていきます。厳密にいうと、第一、第三歌手は同じメロディーですが、第二、第四歌手はそれとはごくわずかに違う部分のあるメロディーを歌っています。リハーサルを繰り返しながら決定したのではないでしょうか。歌詞の内容は神からの音信が遠く広く触れ告げられることを歌っています。
第二曲ではメロディーは最初単純で皆でハモっているのですが、徐々にメロディーは引き延ばされ日本の民謡のようにリズム感がはっきりしなくなっていきます。でもハモり続けます。また音域も拡大し、中盤ではハイソプラノの超高音域が聴かれます。ここで一瞬休止が入ります(LP時代は)ここで盤を裏返しました。歌詞は、悪を離れ善を行え、といったところです。
第三曲はゆっくりしたリズムです。良いことを行った結果と悪いことを行った結果が対比されていますが、曲もそれに応じるように明暗を行き来します。優しく諭すような音楽です。
第四曲。テンポが加速して元の速さに戻ります。楽器や踊りで神を賛美せよ、と歌われます。最後の歌詞は誰でも知っている、「ハレルヤ!(ヤハを賛美せよ。ヤハは神のみ名の短縮形)」です。最後は「ハレルヤ」だけが繰り返されて興奮のうちに曲は終わります。
それまでの曲との違いは、リズムのテンポが読めないので一緒にノッて、とはならないことでしょうか?リズム的には完全に聴衆は置いてきぼりです。ただ響きはやはりライヒのもので、とりわけ第一曲の茫洋とした雰囲気や第四曲の活気に満ちたエネルギーは人を圧倒するようなものではなくプルアップしてくれます。第二曲のようなメリスマというのでしょうか、リズムのはっきりとしないメロディーはライヒの場合珍しいと思うのですが引き込まれます。
大晦日の夜に自転車を飛ばしてレコード屋に買いに行った日を今でも覚えています。とても強い印象を持ちました。他のミュージシャンも演奏していますが、やはりオリジナルにはかなわないでしょうかね。
Reich: Tehillim スティーヴ・ライヒ&ミュージシャンズ ¥2,294 在庫わずか
なんと、オリジナルしか扱っていません。
オリジナル版。少し安い。
ライヒも認めるアラーム・ウィル・サウンドによる演奏。
mp3ダウンロード版です。
他にもまだあったのですが…、今はもうあまり扱っていないのですね。少し寂しいです。
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