涼しくなってきた朝・夕の読書に。ティペット:「二重弦楽合奏のための協奏曲」

Thomas B.によるPixabayからの画像
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ティペットは日本ではあまり演奏される機会に恵まれず、知名度も高いとは言えません。ですがこの英国の作曲家の作品は品位があって、生き生きとしていて美しく、きびきびとした躍動感もあります。

二群に分かれた弦楽合奏団が(おそらく)左右に配置されていて、いくらか空間的なことも意識されているのかもしれませんが、むしろ対位法を明確にするために二群に分けているように思いました。

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最初に購入したのはネヴィル・マリナーの指揮したアカデミー・セント・フィールズのLPでしたが、オール・ティペットで他にはコレルリの主題に基づいた幻想曲が入っていました。ジャケ買いをすることはまずないので、おそらくFMで耳にして探したのでしょう。

曲は三つの楽章からなっています。躍動感ある第一楽章、ゆったりとした時の流れが何か歴史を感じさせる第2楽章。第3楽章は再びきびきびした音楽に戻りますが、テンポを保ちつつ懐のゆったりしたおおらかな情景が魅力です。

第一楽章、序奏もなくいきなり主題に入っていきます。何拍子なのかよくわからないですがはっきりとした拍があり、メロディーも明確です。同年代の作曲家としてはかなり古典的な印象が強いです。ですから時代的には現代音楽なのかもしれませんが、あえてクラシックのカテゴリーにしています。旋律は音程が上がったり下がったり途中でふっと消えたり。そして要所要所で聞かれる弦楽器の持つハーモニーが生かされていてとてもきれいです。20世紀後半の作品ですから時に調性不明確な響きが少しはあるのですが、不協和に聞こえるところがほとんどなく、すう~っと耳になじんで入ってきます。この楽章はひとまず盛り上がって協和音程で閉じられます。

第2楽章、非常に小さな音で始まります。眠ってしまうほど静かに。メロディーの出だしは子守歌のようになめらかですが、後半にきて少し不協和音が聞かれます。しかしメロディーは一貫した調性を保っているようです。暖かな日暮れ前ののどかな雰囲気からやや薄暗い影が差しますが、それもいつしか消えていきます。

第3楽章、第一楽章と同様快活に始まります。こちらのほうがリズムがはっきりしていていますが、それも時々揺れます。三拍子かな?と思っているとずれて二拍子に聞こえたり、音の強弱はありますがあまり極端でないのも美点だと思います。じっくり耳を傾けるもよし、本など読みながらでもよし、テンポの速さに比して和みます。そして終わりの部分でゆったりとした印象的で古典的なメロディーが流れるのですが、堂々、というよりももう少し腰が低く背筋はシャンとしている、といった雰囲気なのです。まさに英国の田園風景でしょうか。いよいよ日は傾いてオレンジ色は濃くなっていきます。

はじめはドボルザークの「アメリカ」風かなと思っていたのですが、考えてみると現地人から見た「英国」なのでしょうね。端正な感じがします。そしてはっきりとした調性で盛り上がって最後はゆっくりになって終わります。

世の中に聞いてみる価値のある音楽というのは数限りがないのだなぁと思ったものでした。

さて、私の買ったLPのCD版はネットショップでは見つかりませんでした。マリナーが振っていても違う曲で、二重弦楽合奏は別の指揮者だったりします。ですから、現在入手できるCDからベスト盤を選ぶのはむつかしいことをご了解ください。

Tippett: Concerto for Double String Orchestra / Rudolf Barshai(cond), Rudolf Barshai Orchestra, Bath Festival Orchestra Bath Festival Orchestra 、 ルドルフ・バルシャイ 、 モスクワ室内管弦楽団 、 コリン・デイヴィス  ¥877
こちらは安いですね。送料無料にはなりませんが。当曲の指揮者はバルシャイです。あとピアノ協奏曲と「コレルリの主題による協奏的幻想曲」が入っています。後者はメニューインがソリストでティペット本人が指揮しています。

Britten: Serenade for Tenor; Tippett: Concerto / Pritchard ヴァーノン・ハンドリー 、 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 、 ジョン・プリッチャード ¥1,054
こちらはブリテンの「セレナーデ」との組み合わせ。私は聞いたことがありませんがご関心のある方は。

Britten: Spring Symphony, Violin Concertos (Walton); Tippett: Concerto for Double String Orchestra, etc<初回生産限定盤> Various Artists ¥2,294
こちらはブリテンを中心に、同時代のウォルトン、ティペットをセットにした5枚組です。

Tippett: Fantasia Concertante on a Theme of Corelli, Ritual Dances from the Midsummer Marriage, etc ルドルフ・バルシャイ 、 マイケル・ティペット 、 ボーンマス交響楽団 、 Bath Festival Orchestra 、 コリン・デイヴィス 、 ネヴィル・マリナー ¥1,054
こちらはティペットに焦点を当てた二枚組。コンチェルトがお気に召しましたら是非どうぞ。送料がかかりますが二枚組ですので割安だと思います。指揮者も有名どころですね。

Tippett: Concerto For Double String Orchestra スコットランド室内管弦楽団 ¥1,054
こちらはこの曲しかクレジットされていなかったのですが・・・。アマゾンに情報がありまして、「コレルリ」と「Song  1~3」が入っていました。でもタワーのほうが安かったのでこちらでのみ紹介します。


ティペット:二重弦楽合奏のための協奏曲/ベルク:ヴァイオリン協奏曲/ヤナーチェク:シンフォニエッタ(パイネマン/ケンペ)(1975, 1976) Import ¥1,715
これはなかなかの取り合わせですね!かなり楽しめそうです。
他にも少しありましたがタワーのほうが安かったので。なお、このシリーズで「コレルリ」とブラームスの第二番の組み合わせのものもありました。

さすがにYahooや楽天にないわけではないのですが、価格で負けています。大型専門店の勝利ですね。
演奏のお勧めができなくてごめんなさい。

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