リムスキー=コルサコフ
他の作曲家の作品を編纂しなおしたり、オーケストレーションを変更したりなど、いろいろ余計なこと(?)をしてくれる(いやいや大助かり)作曲家ではありますが、もちろんオリジナルが作れなかったわけではなく、素晴らしいメロディーメーカーとして作品を数多く残してます。
その中でもシェヘラザードが白眉でしょう。美しいメロディー、起伏に富んだ筋書き、そしてもちろん素晴らしいオーケストレーションによって一大絵巻を描き出しています。
曲は4つの楽章からなっています。
第一楽章:「海とシンドバットの船」
第2楽章:「カレンダー王子の物語」
第3楽章:「若い王子と王女」
第四楽章:「バクダットの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破する。終曲」
いわゆる千夜一夜物語(アラビアンナイト)の話です。
サルタン(王)シャーリアールは妻の不貞に腹を立て、次から次へと若い女性を王妃にし、一夜を過ごしては殺害するという恐ろしいことを繰り返すようになります。そこで大臣が自分の娘シェヘラザードを王に差し出します。シェヘラザードは夜毎に物語を聞かせては、いいところまでくると続きはまた明日の晩、と言って王の関心を引き伸ばし続けます。続きを聞きたい王はシェヘラザードを殺すことができず、ついに二百数十に分けられたその物語を聞き終える頃に王妃シェヘラザードを殺害することを諦めます。
音楽はシェヘラザードが語るアラビアンナイトの物語に沿って進んでいきますが、それと同時並行して、シャーリアールとシェヘラザードのテーマも随所に出てきます。特に曲の初めに演奏される王の高圧的な主題が、曲の最後には非常に穏やかな優しいものに変わっていると言う点に注目できます。シェヘラザードの主題は随所に出てきて、物語の語り部としての姿が浮かび上がります。
第一楽章ではまず序奏として、恐ろしげな王に対してアラビアンナイトが語り出されるところから始まります。王妃の「夜はまだ長うございます」と語るところからシンドバットの話の始まりです。曲は大海原に乗り出す船のゆったりとした波の揺れを感じさせます。この楽章では王と王妃の主題が巧みに用いられており、自然に2人が物語の中に入っていくような気がします。
第2楽章、第3楽章の物語の内容はよくわかりませんが、まず第2楽章は非常に勇ましい音楽です。物語の始めは何か放浪の旅を思わせるものですが、続いて響く金管楽器は戦いを予感させます。そして行進・行軍を思わせる音楽が続き、最後も勇ましいラッパ音で曲を閉じます。対照的に第3楽章に出てくるのは、優雅なおっとりとした王子と王女です。最初の主題が王女で、続いて馬の並足のような曲が王子なのでしょう。 曲の結びも可愛らしいものです。
第四楽章。王は話の続きを早く聞きたくて仕方が無いようです。シェヘラザードはそれに応えて物語を始めます。祭りの喧騒はハチャトリアンの「レズギンカ舞曲」と同じリズムで描き出されます。曲はどんどん熱を帯びて行き、最高潮に達すると場面は荒れ狂う海へと転換し、船は難破し、その後波は穏やかに引いていきます。シャーリアールの主題が非常に穏やかに演奏された後、シェヘラザードの主題が消えていくように曲は結ばれます。
曲中どうなっているんだろうと興味を持った点がありました。弦楽器がピチカートでテンポを刻む中、イングリッシュホルンが自由にメロディーを吹いて最後のところでぴたっと合うのですが、奏者によってかなり速さや吹き方が違うのです。いわゆるアドリブですね。でもなぜ最後は会うのか?楽譜を見て納得がいきました。ピチカートの数が決まっていないのですね。独奏者のタイミングを見計らって合わせる、ということがわかりました。もちろん独奏者もリズムには合わせなければなりません。そこを指揮者がうまくつなぐと言う事ですね。
オーケストレーションもダイナミックなので、すっかり三管編成だと思っていましたが実際は二管編成です。さすが。見事。
多くの演奏者が取り上げていてしかも名盤と言われるものも数多くあり、いくらか自分の好みに偏りがちではあるものの、極力一般的にお勧めできるものをチョイスしてみました。
リムスキー=コルサコフ:シェエラザード ストラヴィンスキー:火の鳥 ユージン・オーマンディ ¥1,285
LP時代の定番。火の鳥が初CD化と言うのもナイスカップリング。
記録としても定番。電気録音が始まって少し後の録音。音質的にはLP程度。
オーケストラのあらゆる部分を統御するきめ細かな名演。
シェヘラザードは意外にもこれ1枚しか録音を残さなかったカラヤン。
絢爛豪華の色彩美が期待できます。しかも安い!
タワレコで紹介したものと同じです。
いくらか抑制のある表現がお好きな方に。
力強い表現が期待できます。
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