CDの紹介です。とても楽しい一枚で、以前紹介した「プルチネルラ」も収録されています。他の曲は比較的小編成の曲で、リラックスして聞くことができます。お手元に一枚いかがでしょう。表題の三曲をご紹介します。
まず「ラグタイム」ですが、ラグタイムとは19世紀末から20世紀初頭まで流行ったジャズの一ジャンルで、ストラヴィンスキーはこのジャズのイディオムを使って小品を作曲しました。とはいえ、ラグタイムがきびきびしたリズムを感じされるものであるにもかかわらず、彼の「ラグタイム」は、はっきり言って「だれて」います。このだらだら感が何とも言えません。このCDの中では「なんだこれ?」と思われるかもしれません。が、基本的にメロディーメーカーではないストラヴィンスキーにとってのジャズはこんな感じなのかもしれません。彼には他に「ピアノ・ラグ・ミュージック」という作品がありますが、確かにラグタイムのリズム感はありますが、どこがジャズなのか、とらえどころがありません。逆に面白いので一度は聴いてみることをお勧めします。「ラグタイム」の方は、開始と終了のみ「キビっ」としています。何度聞いても不思議な曲です。エサ=ペッカ・サロネンは、それでもこの曲にかなり生き生きとした命を吹き込んでいます。あまり元気いっぱいに演奏しないところがミソなのかもしれません。
続いて「狐」。これは「きつね」と表記した方が雰囲気が出ますね、民話です。四人のダンサーによるバレエですが、セリフを四人の歌手が歌います。筋は、狐が鶏を襲いますが、猫と山羊がそれを助けるという単純な内容です。「バーレスク」と謳っていますが、ユーモアとウィットに富んだ滑稽な曲を指しています。セリフまではよく知らないのですが、聴いていると大体の流れはわかります。この手の民話はどこにでもあるのですね。結構楽しめると思います。
そして「八重奏曲」ですが、こちらは新古典主義の精緻で美しい曲です。「管楽器のための」と題されています。ストラヴィンスキーは「管楽器のための交響曲」も作曲していますが、あちらは正直あまり楽しい曲ではありません。私にとっては。「八重奏曲」のできがあまりにも良すぎるからかもしれません。編成は、フルート、クラリネット、ファゴットx2、トランペットx2、トロンボーンx2という変わった編成です。三つの楽章からなり、まず第一楽章は精緻に計算されつくしたシンフォニアです。楽器の入りと出が絶妙で大変美しく仕上がっています。第2楽章は主題と変奏。主題は単調なものですが、変奏の部分は複雑で、かなり速く演奏されたりどのように変奏されているのかわかりにくい部分もありますが、楽しいです。演奏はなかなか難しそうです。
第3楽章へは切れ目なく入ります。第3楽章はフィナーレ。ファゴットがメロディーを奏し始めると、グッと聴きやすくなります。なかなかきれいなメロディーで、これはどこから来ているんでしょうか。この曲に限ったことではないのですが、ffで「吹き鳴らす」ということがこのCDにはほとんどありません。フィナーレも徐々に静かになって、あっさりと幕を閉じます。
秋の夜長をくつろぐのにお勧めの一枚です。
現在取り扱いが少なくなっているようです。
ストラヴィンスキー(1882-1971)/Pulcinella: Salonen / London Sinfonietta プルチネルラ*バレエ音楽 / 11の楽器のためのラグタイム / きつね*バレエ音楽 / 管楽八重奏曲 価格(税込):¥2,160 会員価格(税込):¥1,987
[CD] エサ=ペッカ・サロネン(cond)/ストラヴィンスキー: プルチネルラ/ラグタイム/狐(きつね)/八重奏曲 |
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