ピアノの様々な技巧を楽しむ。ショパン:エチュード 作品10

Norbert OriskóによるPixabayからの画像

練習曲なのに癒される。癒されるというより高揚させられるといった方が正確かも。

エチュード、つまりピアノの練習曲なわけですが、たいへん聴きごたえがありレコーディングも活発に行われています。ショパンの書簡によるとこの曲集は「画期的な練習曲」として書かれました。ショパンの言わんとしていたこととは違うかもしれませんが確かに画期的な練習曲ではあります。というのも、練習曲でありながらピアノ曲としての完成度が非常に高いということです。

ちなみにショパンのエチュードには作品10と作品25の二つの作品があります。今回は作品10についてです。

聴いていると確かに練習曲として書かれていることがよくわかります。一定のパターン、指の動き、左右の手の配分など緻密に計算されていることが聴き取れます。ショパンは音楽教師として生活していた時期もありますし、ピアニストに対する愛情が彼のどの曲からも感じられます。それは練習曲に限らず、ピアニストにとってより良い技巧を身に付け、難しい曲もただ単に難しくしているのではなく、表現力豊かな演奏に導くように書かれている、そんな風に感じます。加えて、他の楽器ではなくピアノでしか表現できない曲作りが、彼をして「ピアノの詩人」と言わしめているのでしょうね。

いかにも練習曲らしい第一曲。ポリーニの演奏

お聴きのように第一曲はいかにもな練習曲です。ただし、右手の練習にはなるけど左手はどうなの?と感じる向きもあるかもしれません。第二曲などは左右の手の役割が途中で入れ替わり、両手にとっての訓練になります。この曲は有名なので「のだめ」でお聴きになった方も多いかと思います。見たことはありませんが「ピアノの森」という作品でも使われているそうです。第一曲は右手のアルペジオに終始しますが、弾くと聴くでは大違い。相当な難曲となっているようです。そして楽譜を見ると単純ですが決して退屈ではなく、聴き手のみならず弾き手をも引き付ける何ものかがあると感じます。この辺りが「僕はいま画期的な練習曲を作曲しています」という彼の書簡に込められた自信通りの作品になっているのではないでしょうか。迫力、爽快感、疾走感を味わうことのできる一曲です。

(ちなみにゴドフスキーという人がこの難しい曲集をさらに難しく編曲したものが存在します。そちらでは第一曲で左手は右手と一緒にアルペジオします)。

第二曲は上述の通りドラマ「のだめカンタービレ」で主人公が子供時代にマスターしたもので、トラウマになっていてコンクールでも最低の演奏をする、という一つのキーになる曲です。これなど聴いていると確かに練習になるのだろうとは思いますが、むしろその迫力に圧倒されてしまい、曲そのものの魅力にとりつかれてしまいます。何か執念のようなものを感じます。曲調は第一曲とは打って変わって暗い色彩を帯びています。エネルギーをもらえるような曲です。

第三曲は有名な「別れの曲」です。ああこれもエチュード、練習曲だったんだと思われる方もおられることでしょう。A-B-Aの形で曲は進行しますが、Aでは右手が伴奏となる音型を弾くと同時にメロディーを弾きます。Bでは左右均等な動きが多いです。ショパンの中でもとくに有名な曲の一つでしょう。大林監督作品「さびしんぼう」のテーマ曲にもなっていて歌詞付で歌われます。頑張れば演奏できるようになるのでアマチュア・ピアニストにとっても憧れの曲です。

他にも黒鍵だけを使った曲(実は一か所だけ白鍵を弾く)等、どこかで耳にしたことがあるものが多数含まれています。

終曲、第十二曲は「革命」として知られ、こちらも大変有名曲。練習曲としては左手のアルペジオに注意が集中されているのではないかと思います。情熱的な曲で、ショパンの本質「熱い男」が溢れ出ます。彼は病弱だったこともあり「なよっ」としたような印象があったのですが、それはあくまでも印象。本質は燃える男です。高音域から雪崩のように音が崩れ落ちて来て、そのあと左手がアルペジオの伴奏を始めます。その上に右手でメロディーがのせられるのですが、繰り返すたびにリズムが微妙に変化していきます。「息せき切って」という表現がぴったりです。この辺りの作曲技法は、「うまいな~」と感心させられます。最後の和音が長調になるのもよいですね。説得力もあり力が湧いてきます。


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ピアノの巨匠、リヒテルの鉄板の演奏。


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個人的には(あまりに上手すぎて)敬遠しがちなポリーニですが、名盤の誉れ高いので。作品25も含みます。


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のびやかな明るい音色が魅力的な彼の演奏。バラード全曲を含みます。


Godowsky: The Complete Studies on Chopin’s Etudes / Hamelin ¥4,242
記事で取り上げたので一応。ゴドフスキーの編曲によるエチュード全集です。


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Towerで紹介しているものです。


ショパン:12の練習曲 作品10/作品25 ポリーニ(マウリツィオ) ¥1,675
こちらもTowerで紹介したもの。

ぜひお楽しみください。