何かに立ち向かおうとするときに。ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

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クラシックと思って聴くと最初はとっつきずらいかもしれません。何度か繰り返し聴くうちに慣れてきて、そうなるとたいへん力強い意志を感じさせる曲だと思われることでしょう。通して聴くことで気持ちを前向きにし、勇気を与えてくれる交響曲です。それはベートーヴェンの交響曲第5番にも匹敵するでしょう。

苦悩する一人の作曲家がいました。その名をショスタコーヴィチ。彼は体制の弾圧の中でもがき苦しみながら命の危険すら感じつつ作品を生み出し続けた、そう受け止められているはずです。それもまた事実ですが、一人の作曲家としての彼のイメージを幾分歪めているように思えます。

ヘッドフォン 第4楽章

ソビエトでモーツァルトの再来!と喧伝されて、いわば国家の広告塔とならざるを得なくなりました。とは言え彼は上層部の人々にとって扱いやすい存在ではなかったと思われます。というのも、出世作ともいえる交響曲第一番の「イントロを修正するように」と、なみいる大先生たち(著名な作曲家たち)が提案したにも関わらず、それを頑なに無視し続けたという話です。

つまりある意味頑固者です。といっても旧来の様式にしがみつく保守派という意味ではなく、より先進的と思われていた西欧の作曲語法を取り入れ、当時としては前衛的でかなりマニアックな音楽へ突き進んでいきます。彼はマーラーのことを尊敬していたようです。一方では歌劇の内容が猥雑で、「不道徳だ」との批判を受けたこともあります(確かに品位の欠けたものもありました)。この国の中で、もし公的な批判を受けるなら、作曲家生命は失われる、いや文字通りの命すら危うい、それほどの圧力の中で精力的に作曲を続けていきました。

つまりは独裁者や国家的な権力の意に沿った音楽を生み出し続けなければならなかったわけで、芸術家としては「やってられるか!」と吐き捨てて亡命も考えるかもしれませんね。しかしそうはせず、国に留まり続けました。

ショスタコーヴィチのすごいところは、その枠の中で最大限の努力をし、ときには敵の裏をかいた作品を書き続けたところではないでしょうか。代表作とされる「交響曲第5番」はようやく日本でも「革命」と呼ばれることが以前に比べれば少なくなりましたが、体制に迎合しているかのように見せながらも、彼は自身の音楽を確実に紡ぎだしていきます。

中には、これは権力におもねった作品だから嫌いだ、という声も聞きます。でも本当にそうなのでしょうか?
もし彼を取り巻く環境が異なっていたら、この名曲は生まれなかったかもしれません。気になるのは、その圧力がなかった場合、もっとクォリティの高い音楽を発表し続けることができたのか、という疑問です。
彼には気の毒とは思いつつ、その過酷な環境こそが彼をして20世紀を代表する大作曲家たらしめているように思われます。

ちなみに、ショスタコーヴィチが好きだと公言する人の多くは「第5番」は彼の最高傑作ではないと言うそうです。実は私もそうなのですが…。それでも「大傑作」であることは間違いありません。この曲が存在する、ということだけでさえ私は勇気をもらえます。


エフゲニー・ムラヴィンスキー/ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」 【CD】 1,453円
作曲者と親交があり、いくつもの初演を行ったムラビンスキーは外せません。
レニングラード・フィル(現サンクトペテルブルク・フィル)を率い、じっくりと熟成させた響きは比肩するものがありません。録音にやや難があるかもしれませんが、それを補って余りある記録です。
お値段もお手ごろなのでご紹介しました。


【CD】 Shostakovich: Symphony No.5 エフゲニー・ムラヴィンスキー 、 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 ¥2,559
上野でのライブです。とにかく録音(リマスタリング)が良く、空気感まで再現された一枚!
演奏そのものももちろん素晴らしく、音質+演奏で「ベストCD」に挙げている評者もいる。
少し値が張るのが玉に瑕ですが、それだけの価値はあります。
ちなみにムラヴィンスキーは大の飛行機嫌いで、陸路、海路で来日したという話を聞きました。
今(執筆時点)ならタワーレコードに在庫があるみたいです。

交響曲第5番 ムラヴィンスキー&レニングラード・フィル(1973年5月
上記の日本でのライブと同時期の録音。上記CDに次ぐベスト2との評も。
内容の完成度は間違いのないところでしょう。こちらもちょっとお高いですね。(3,337円・送料無料)


【SACDハイブリッド】 Shostakovich: Symphony No.4, 5 & 6 ワレリー・ゲルギエフ 、 マリインスキー劇場管弦楽団 ¥3,356
輸入盤


【SACDハイブリッド】 ショスタコーヴィチ: 交響曲第4番, 第5番, 第6番 ワレリー・ゲルギエフ 、 マリインスキー劇場管弦楽団 ¥4,320
国内流通仕様

ムラヴィンスキー亡き後、後継者というわけではありませんがゲルギエフの勢いが止まらない、と感じている方も多いのでは?
こちらも手勢のマリインスキー管を率い、スキのない緊張感ある演奏を聞かせてくれます。ムラヴィンスキーとはかなり異なる部分にも説得力があり、音楽に没入させてくれます。5番、6番はライブです。
二枚組で4,5,6番をまとめて入手できるのはお得ですが、5番が分断されていないか?
私は電子媒体で入手したのでわからなかったのですが、調べたところ、DISC1が4番で、5番、6番はDISC2にまとめられているそうです。曲の途中でディスクを入れ替えるのは集中して聴くことを難しくしますから。よかったです。もっとも、LPの時代には途中で少なくとも一回は盤をひっくり返さなければならなかったですが。父親がSP時代の話をしてくれましたが、交響曲一曲で、何枚も(正確には忘れました)とっかえひっかえしなければならなかったそうです。


エフゲニー・ムラヴィンスキー/ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 革命 CD 1,434円
最初に紹介したものと同じです。お店によって多少値段が違いますので。送料とか。

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