名曲とされてはいるものの、もっともっと評価されてしかるべき曲だと思います。
確かに時代も内容も「現代音楽」になるわけですが、慣れると「クラシック」に聴こえてきます。変な言い方ですね。実際、作曲者は奇抜なことを何も行っておらず、伝統的なクラシックの延長上に作品を生み出しました。そのため調性感はあまりないですが、いわゆる「無調」を意識して生み出されたものとは聴こえません。また、リズムについていえば、古典的な曲と変わりありません。
第一楽章ではピアノの弱音から始まって、しばらくすると突然怪物的な主題が現れます。続いて、ピアノが伴奏にまわり、木管楽器の美しい音色が心に響きます。メロディアスとまではいきませんが、決して異様なものではありません。この楽章は静かに幕を閉じます。
第2楽章は、なんでも作曲者の見た夢と関連していると聞きました。最初から最後まで一つのリズムパターンが執拗に鳴り続けます。ピアノであったり、オーケストラであったり。そのリズムの中で様々な断片が演奏されていきます。最弱音から始まって最強音に達し、再び最弱音へと静まり返ってこの楽章も終わります。
第3楽章は元気の良いオーケストラの序奏に続いて、ピアノが第一楽章の怪物的な主題を再び引き始めますが、今度はさらにヒートアップしていきます。おそらく相当な難技巧なのだと思いますが、息をもつかせずに突っ走ります。最高潮に達し、例の主題が曲を結ぶ大変効果的なエンディングです。
決してわけのわからない音楽ではありません。現代音楽入門としても適切ですし、もっと海外でも評価されて演奏の機会があればよいのにと思っています。
残念ながら作曲者の矢代秋雄は比較的若くして亡くなっているので作品数は多いとは言えませんが、他にも交響曲や室内楽作品も書いています。この協奏曲はまず最初に聴いてほしいと思います。
矢代秋雄: ピアノ協奏曲, 2本のフルートとピアノのためのソナタ, ピアノ・ソナタ 中村紘子 、 森正 、 NHK交響楽団 ¥2,160
矢代作品のみで構成されています。ピアノ協奏曲は初演です。鋼の指を持つ中村紘子にぴったりの曲だったのではないでしょうか?
こちらは現代日本を代表する他の二人の作品とともに収録されています。CDとしての好みでどうぞ。入りやすいのはこちらかもしれません。
タワレコと同じものです。
こちらもタワレコと同じです。プライム会員なら少しお得ということですね。
以前は、ナクソスから 岡田博美のピアノでよい演奏が出ていたのですが、今はAmazonのダウンロード販売のみになっているようですね。再び出てくる可能性もありますが、こちらもテンポよくなかなかの好演で聴くべきものがあります。
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