ベートーヴェン好きな方の中に、この曲はあんまり・・・、という方がおられます。そういう方は交響曲第7番(のだめのオープニング曲)もあまり好きではない、という何か関連がありそうです。
第一楽章は歯切れのよいパルスから始まります。それを基調として一見単純に思える操作が加えられてゆき、あたかも機関車のように突き進んで行きます。音量の強弱はあるものの、一貫して力強さと喜びに満ちています。
第2楽章は一転して非常に緩いスピードで沈思黙考する作曲家自身の肖像のような雰囲気が漂います。でも決して重苦しくはなりません
第3楽章は再び力を得ますが、翼を広げて大空を翔けゆく鳥のようなおおらかなメロディーが奏でられます。この部分のいろいろな音の操作を加えながら曲は縦横無尽に滑空する鳥たちから見た風景のように目まぐるしく変わり、最後は終結部にまっすぐに・・・。
ベートーヴェンはモーレツな天才ですが、得てして有り勝ちなことに精神的には安定とは程遠い状態でした。何しろ遺書を書いたり(これは聴力がほとんど失われるということを考えるとひどく気の毒ではあります)、ハイになると猛然と曲を書き続けてみたり。そうした浮き沈みが曲にもはっきり表れています。まじめで努力家だったことや、女性関係で思い悩むことなど、環境的には誰にでもありそうな環境といえばそうなのですが、恐らくは彼の高い感受性ゆえに大きな影響を被ったのでしょう。
「ワルトシュタイン」や第7交響曲は、何かのほほんとしているといいますか、テンションが高く軽くて多幸感に包まれていたのかと思えるほどにお気楽で、聴くほうもお気楽でいられます。もちろんだからといって作品の質が落ちるとか不真面目であるということではありません。どちらも構成力のしっかりした傑作です。
思いますに、ベートーヴェンのファンの中には彼の「思い悩み葛藤する」姿に惚れる方が多いのではないでしょうか?
それほどまでに、「ワルトシュタイン」は苦悩の痕跡が認められない作品です。が、本当にそうなのかどうかは謎のままです。第2楽章こそ静謐な音楽ではありますが、全体を見ると「パワー」の一語に集約されます。
とにもかくにも、リラックスして楽しく聞くことのできる作品であることには間違いありません。お昼のうたた寝にはもってこいかも、などと言うとお叱りになる向きもあるでしょうが、音の流れを楽しむことのできる本当に素晴らしいソナタです。
夏、暑いけれども湿気のない爽やかな風が吹く中、午後の日差しを心地よく浴びているような気分です。
演奏者もパワー系の方が合っているようで、私はギレリスの演奏が好きです。ビデオで見ると、音階をオクターブで弾くときに上から叩くかわりに、親指と小指で「コ」の字型を作ってグリッサンドしていました。強靭な手を持つ彼ならではのパフォーマンスと言えましょう
(真似したところ、指は痛いは、手の形を保持できないは、まともに音は出ないはで、才能+天賦の手が必要なようです)。
CDをいくつか推薦します。
Emil Gilels – The 1964 Seattle Recital
タワレコお勧め第一位はやはりギレリス(鋼鉄のピアニスト・鋼鉄の手と称されています)。こちらはリサイタルです。(2,581円/セール1,807円)
ルビンシュタインが興味深い曲目で続きます。今後紹介予定の曲が入っています。お楽しみに。(2,437円/セール1,781円)
変わった組み合わせですが、解説を読むと納得。(1,296円/セール1,037円)
普通なら「悲愴」が入るところに。曲順も興味深いです。(1,080円)
今回の検索ではお勧めしたいCDはタワーよりごくわずかですが高いです。ポイントがあれば逆転かな。
いわゆる「三大ピアノソナタ」にワルトシュタインを加えて「四大ソナタ」になってます。
ケンプの演奏はスタンダードなものとしてお勧めいたします。カスタマーレビューでも高評価。(1,477円)
Yahooもなぜか既出のものは少しだけ高い。こちらもポイントがあればのぞいてみる価値ありです。そんな中、他で気づかなかったのがこちら。
ケンプです。なんか投げやりな表題表記。写真も暗い。他にも二店舗同額で販売していましたが、ここだけTポイントが二倍でしたので選びました。「ワルトシュタイン」「テンペスト」「告別」が入っています。(1,028円)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番≪テンペスト≫、第21番≪ワルトシュタイン≫、第26番≪告別≫ [ エミール・ギレリス ] こちらはまた少し違った組み合わせのギレリスです。 |
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