最近広く支持されるようになってきたピアノ版。非常にさわやかでかつエネルギッシュですが、心が落ち着き癒されるナンバーだと思います。泣ける作品でもあります。
追記(2018/10/26)ピアノ演奏者のためのヒント本について追記しました。
原曲は言わずと知れた、無伴奏ヴァイオリン パルティータ 第二番 第6曲 シャコンヌです。たいへんにスケールの大きい音楽で、管弦楽に編曲されることもありますが、ブゾーニによるピアノのための編曲は群を抜いて素晴らしいと思います。
もちろんバッハとは時代が違いますので、バッハが鍵盤楽器向けに書いたなら全く違う曲になっているはずです。
ブゾーニは知る人ぞ知るピアニスト・作曲家で、本来チェンバロのために書かれたバッハの作品をピアノ譜にして校訂したり、オルガンのための曲をピアノ用に編曲したりしています。もちろんオリジナル曲もあります。中には長大なピアノ協奏曲などが。自身は超絶技巧のピアニストとして同時代の人々の称賛を得ていました。
シャコンヌは変奏曲の一種で、繰り返し同じ主題が演奏されつつ、それを様々な和声や旋律が取り巻くスタイルの曲です。今日ではパッサカリアとほぼ同義語になってしまいましたが、大体そんな風に理解しておけばよいでしょう。この曲では最初に登場するメロディーが主題になっていて、土台のように繰り返し繰り返し鳴っているように聴こえます。実際は主題は聴衆の頭の中だけに鳴っているかのように省かれて、変奏部分だけが演奏される状態もあるという、聴衆参加型変奏曲とも言えるでしょう。
実際のところ、無伴奏のヴァイオリンでシャコンヌを演奏するという発想からして奇抜で有り得ない発想ですが、バッハの内面宇宙がいかに突出しているかの証拠となるところでしょう。演奏は困難を極め(ることと思います)、並み居る名演奏家たちが皆それぞれに挑戦しています。
ピアノの名手にしてバッハ作品の校訂者として知られるブゾーニがこの作品の編曲に手を付けました。両手があるのでさぞ弾きやすくなったであろうと思うと、さにあらず。さすがブゾーニだけあってかなりの難曲に仕上がっています。無伴奏ヴァイオリンでは書かれていない音が本来鳴っているであろうところに復元されていますし、音数もピアノの打鍵の限界に迫るところまで増やされています。
曲の流れは原曲に忠実です。短調→長調→短調と進行しますが、それもそのままですし、変奏の順番も元の通りです。
まずテーマが左手で演奏開始されて右手が加わりますが、ヴァイオリンでは原理的に不可能な和音(3音以上の同時打鍵)が最初から登場し、原曲を追って変奏がおこなわれます。簡単な部分はピアノでも簡単に演奏できるようになっていますが、ヴァイオリンで弾きにくい部分はピアノでも難しくなっています。
単なる編曲にとどまらず、ピアノの持つ独特の演奏技法をこれでもかとばかりに詰め込んでおり、深い感動が得られます。最初に書いた通りですが、バロックとはとても言えず、ロマン派時代の曲になっていますが、原曲に引けを取らない名曲と思います。もちろん原曲も押しも押されぬ名曲です。
ピアノ版は最近多くのピアノファンが支持するようになっています。
追記(2018/10/26)
Amazon Kindleで面白い本を見つけました。「本番で演奏するための練習法」というシリーズに、バッハ=ブゾーニ「シャコンヌ」が含まれています。一言で言うとピアノのレッスンの様子をまとめたものです。興味深いのは教わっている生徒はピアノ教師、つまりプロフェッショナルで、演奏会のためにレッスンを受けているというところです。読むと「はは~、プロはこんな風に考えながら演奏しているんだ」等々わかります。ちょっと高度だと感じましたが、演奏に挑戦している人の役に立つかもしれません。
1948年のライブ。ここタワレコに挙げた録音はみんな古いのでほぼモノラルと思って間違いないです。音質より音楽を重視する方々に。
14枚組!ミケランジェリを知りたければこのセットです。またも冒頭に収録。
こちらは音質ゆえに推薦されているものです。ハイブリッドなので通常のCDプレーヤーでも聴けます。
バッハ vs バッハ・トランスクライブド:エレーヌ・グリモー、ドイツ・カンマーフィルハーモニー ¥ 2,286
グリモーの演奏はブゾーニの指示に忠実で、かつ色彩豊かです。「トロンボーンのように」と指示されているところなど確かにその響きがします。下記のアマゾンで紹介しているものです。
¥2,389
最近の録音がなかったので…。これはバッハの作品をピアノに編曲したもので協奏曲なども入っています。アマゾンではすでに新品は入手不可のようです。
ピアノ版「シャコンヌ」に本気で挑戦している人向けの本「本番で演奏するための練習法」シリーズについて追記しました。