
ようやくバーバーのピアノ協奏曲の紹介です。このサイトは近代・現代にかなり偏っていますね。この曲も時代的には現代音楽ですが、古典的な内容なので「クラシック」に分類しています。
ジョン・ブラウニングというピアニストのために書かれた超絶技巧の協奏曲です。演奏は相当に難しく、他の演奏家もあまり取り上げていません。ブラウニング自身、指定の速度では演奏不可能という事で書き直しを依頼した部分もあるほどです。バーバーは彼に対しては好意的で、部分的な変更(「このように弾いてもよい」という注釈)を加えました。オーケストラパートも相当に難しそうです。
圧巻は第3楽章です。
Anny Hwangのピアノ、台北交響楽団。かなり頑張っています。特に前半。
第一楽章はいきなりピアノのソロがしばらく続きます。かなり現代的な響きです。そこにオーケストラが絡んできて美しい主題を演奏します。その主題をピアノが引き継ぎヴァイオリンとペアになるのですが、すぐにピアノパートは細かな装飾的な音型を奏します。木管楽器によって演奏されるメロディーもきれいです。ヴァイオリンがゆったりと流れる美しいメロディーを演奏するのですが、ここまで、現代の響きに慣れていないと「美しい」かどうか少し戸惑われるかもしれません。冒頭に戻ってピアノとオーケストラの役割が入れ替わっての演奏が始まりますが、すぐに冒頭の一部の音型がばらばらにされてピアノ・オーケストラにちりばめられます。管楽器のソロが多いです。短い断片を綴っていきます。最後はピアノとオーケストラが一体となって盛り上がりのうちに楽章を閉じます。
第2楽章はとりわけ美しく聞きやすいメロディーを持っています。最初はフルートで、そしてピアノで演奏される旋律は非常にロマンティックです。オーボエやホルン等も短い断片に加わりますが、ピアノはその際には伴奏に回っています。再びピアノがメロディーを受け持ち、弦楽器が引き継ぐ際にはピアノが伴奏に回るなど、オーケストレーションは比較的古典的な手法をとっているように感じられます。とりわけ「夜」を感じされる楽章です。
第3楽章はがらりと変わって「野獣的」といいますか非常にアグレッシブです。曲が5拍子という事もあり、とても格好良いです。最初に始まる旋律は、ここでもまずピアノが担当し、次に金管楽器が引き継ぎ、互いに伴奏をつけるスタイルです。中間部に入るとピアノは装飾的・伴奏的な役割に徹し、オーケストラが主役を演じます。木管楽器が最初の部分を弱音で再現すると、再び音量を上げピアノと金管楽器の掛け合いになります。終結部も迫力があります。オーケストラが主題を演奏する中ピアノは複雑な駆け上がりを見せ、一瞬の混沌としたリズムのなか大盛り上がりのうちに全楽章を閉じます。
今手元にあるCDとカップリングは違いますが、録音は同じはずの、セル指揮のブラウニングによる演奏です。オケはクリーブランド管弦楽団。まさに鉄板の録音といえるでしょう。現在は店頭で探すしかないような感じです。
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