何を隠そう少年時代はトランペットを吹いていました。ですからこの曲の難しさはわかるつもりです。もちろん現代音楽の無茶振りとは違うのですが、現代の楽器をして流麗に演奏するのは非常に難しいのです。
「現代の楽器をして」というのは、ハイドン以前のトランペットは長い一本の管で、倍音しか出ない、つまり特定の音しか出すことができなかったわけです。高音域に行けば行くほど出る音が増えるので、バッハの曲などではキンキン吹いていますね。
そこでフルートのように穴をあけ、鍵で閉じたり開いたりできるようにして様々な音程を出すことができる楽器が発明されました。ハイドンはこの楽器のために協奏曲を書いたわけです。この楽器はあまり人気が出ず、現在はバルブ機構を設けた楽器に進歩しましたので、音程は自由に出せるようになりました。それでも細かな動きや高音低音のジャンプなど演奏しにくいことこの上ありません。
さて、残念ながら初演の評判は芳しくなかったようですが、現在ではもっとも有名なレパートリーの一つとなりました。トランぺッターなら一度は演奏しているのではないでしょうか?YouTubeにはジャズのウィントン・マルサリスの演奏もありました。
第一楽章は、弦で軽快に穏やかに始まりますが序奏がやや長いです。トランペットも低い音域からゆっくりと始まりますが、すぐに高音域へと駆け上がっていきます。素早い音階的旋律など、それまでの楽器では不可能だったメロディーが駆け巡ります。第一楽章にはカデンツァがあり、奏者の技巧を目一杯見せつけます。
第2楽章は、三拍子のゆったりした曲でトランペットと伴奏が交互にメロディーを繰り返します。比較的中低域を多用したメロディーで楽器の可能性を披露しようとしたのかもしれません。
第3楽章は再び軽快にリズムを刻みます。中高音域が中心となってきます。ハイドンのこの曲も陰り一つない明るく目一杯元気な曲といえるでしょう。最後はいかにも「ラッパ」の感じで終わります。
トランペットと一口に言ってもいろいろあるのをご存知でしょうか?よく見かけるのがB♭管、オーケストラなどでも使われる少し短いC管、他にもE♭管やバッハで聴かれるピッコロトランペット、ベルディの歌劇でもっぱら使われる「アイーダ」トランペット、他には私は「春の祭典」でしか聞いたことがない低音のもの。トロンボーン奏者が吹いているのではないかと思うのですが違ったらすみません。
もちろんそれは木管楽器についてもいえることなのですが、それぞれの楽器に響きの特徴があって、作曲者がどんな意図で選んでいるのか知ると、音楽もさらに奥深く味わえますね。
で、推薦するのはほとんどモーリス・アンドレになってしまいましたが、YouTubeでは女流トランぺッターも人気沸騰のようですね。確かに素晴らしい演奏です。残念ながらまだあまりこの曲のCDが出ていないようでした。機会があれば紹介したいです。
Great Trumpet Concertos<限定盤> モーリス・アンドレ ¥1,501
6枚組でこの内容は素晴らしいです。オーボエなどのために書かれた曲も含まれていて、アンドレの輝かしい音色に心癒されます。本筋とずれちゃいますがバロックの曲に特に思い入れがあります。
こちらはハイドンの曲に絞った協奏曲集。チェロ、トランペット、二つのホルンのために書かれたものです。
ハイドンとモーツアルト父子の協奏曲です。クラシックBEST100シリーズから。
いやぁ、こんなものが存在していたとは。もちろん未聴ですが「目から鱗」の「名盤」と確かに書かれています。トランペットがシュトックハウゼンの息子、というわけですが・・・。カデンツァはシュトックハウゼン作だそうです。「多少のクセはありますが、シュトックハウゼンの絶妙な匙加減によって作品全体の雰囲気を壊さない程度におさめられています」とありますが、うう~ん、気になります。
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