当時としては前衛音楽?集中力アップに。ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」

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確かにモーツァルトのピアノ・ソナタとは違う。ベートーヴェンの時代、お金を出して「新しい音楽」を作曲させるのが一つの流れとしてあったとか。「月光」も変わった曲です。例外は少なからずあるものの、定番は「急-緩-急」。しかしこの曲は第一楽章まるまる緩徐楽章でしかもウナ・コルダ。つまりシフトペダルを踏んで一本の弦だけを使う。結果、弱音。

なぜか明るい演奏に感じませんか?(小菅優)

いきなり分散和音の連続で、ようやくメロディーらしきものが出てきたと思ったら、しばらくおんなじ音。第二楽章は割と普通なので余計に際立ちます。ベートーヴェンは第一楽章はダンパーペダルを上げっぱなしで演奏することを意図していたようです。さすがに現代の楽器は音が良く伸びますからぐちゃぐちゃになってしまうでしょうが、どんな響きを想定していたのでしょうね。

ちなみに、このソナタを「月光」のキーワードで分析している論文がネットにアップされていましたが、どんなものでしょう。このタイトルは後付けですし、作曲者の意図を組んでいるとは必ずしも思えないので論文として成り立たないように思うのですが。ちなみに原題は「幻想曲風ソナタ」です。

楽譜をただ機械的に演奏したならとてもだらだらした曲になりそうですが、試聴機の小菅優はさすがですね。日本人好みともいえるかもしれません。もっと誇張するとギレリスの演奏になります。さすがに単調さに耐えられないのでしょうかね?対して園田隆弘の演奏はもっとずっと抑えた感じになります。モートン・フェルドマンの曲みたいと言ったら叱られるでしょうか。

第二楽章の中にはありえないfpが出てきます。唐突に。でも、どの演奏家を聴いてもさらっと流しています。これももしかすると楽器の違いによるものなのかもしれません。この楽章は演奏者による違いがあまり感じられない部分でもあります。小菅の演奏では(すみません、日本人だけ「さん」をつけるのもなんなので)、ちょっとした間の取り方に工夫を感じます。私は日本的に感じましたがいかがでしょう。

第三楽章は第14番にしてすでにベートーヴェンらしさがはっきりと出ています。ここでも感覚を裏切るようでちょっと面白いのですが、冒頭の部分はクレッシェンドを繰り返して強打を加えそうなものですが、実際はクレッシェンドせず、のまま進んで最後突然ff になります。難しそうで易しそうで、やっぱり難しいですね、この曲の演奏は。この楽章は奏者によって速さが相当に違います。ギレリスは超高速で弾いています。小菅は中庸というにはかなり速いですが、個々の音がはっきり聞こえるのがいいですね。ペダルの使い方は独自に研究されているようです。他の演奏では音が混ざる部分も濁さずに弾いていたりします。なかなか好感の持てる演奏です。グールドなどは高速です。なぜかロシアのリヒテルやギレリスがお手本のようになっていた時代がありましたが(お手本には違いないと思います)、特にギレリスのパワーで圧倒しようとするかのような爆演は好みの分かれるところでしょう。最初に聴いたのが彼のレコードだったので嫌いではありません。どちらかというと好きです。

抑えた第一楽章から可憐な第二楽章、そして爆裂する第三楽章と異なる性格の楽章を持つソナタですが、全体を聴くと気持ちを落ち着けて、集中力を増すのに良いと思っています。目を閉じてじっと聴き入ってみるのもよいものです。

 

アルフレート・ブレンデルと、エミール・ギレリスの推薦版はピアノ・ソナタ第23番「熱情」をご参照下さい。そちらに収録されています。
と、なると・・・。

新旧聴き比べというわけで。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ≪悲愴≫≪月光≫≪熱情≫<限定盤> ヴィルヘルム・ケンプ ¥1,028(送料別)
繰り返しプレスされているケンプの演奏です。柔らかく優しい演奏だと感じます。

【SACDハイブリッド】 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集<完全生産限定盤> 小菅優 ¥16,200
試聴機の音源に間違いありません。これぞ新時代のベートーヴェンか。硬質で鋭い感じ。なんだかすごい演奏のように感じてきました。ただ全集にしても高いですね。ブレンデルの全集が¥5,127ですから。五巻に分かれているので「月光」の含まれている下記をチョイスする手もあります。本当は全部聴きたいですけど。

【SACDハイブリッド】 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第2巻「愛」 小菅優 ¥4,104
分冊、という表現でよいのでしょうか?こちらの方がやはり売れるようでして、在庫わずかとか、お取り寄せとか書いてあるのが気になります。しかし、新たな全集として確立されれば再プレスされていくことでしょう。

 

ケンプについては「ワルトシュタイン」をご参照ください。四大ソナタが入ってお得でもあります。そしてギレリスについては「熱情」をご参照ください。同じ盤がいろいろなところに顔を出すのもなんですので。といって何も書かないのもなんですから…。


ベートーヴェン:3大ピアノ・ソナタ集「悲愴」「月光」「熱情」 ユンディ・リ  ¥1,197

真摯な演奏をする人だと思います。どの曲もよいです。「月光」の第三楽章の出だしで、左手の音量がちょっと大きいかな?などと偉そうに感想を述べておきます。高い技術に裏打ちされた「心」ある演奏です。

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