爽やかであるとはこういうこと。ディーリアス:組曲「フロリダ」

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  • どんな曲?

イギリスの作曲家ディーリアスの作品の中で、もっとも有名と言ってもよい曲。彼はアメリカのフロリダで過ごした時期があり、後にこの頃の印象を曲にしているようです。4つの楽章からなる40分弱の長さの曲で、構成的には6つの部分からなっていますが、第一楽章と第3楽章はそれぞれ二つの部分を含んでいます。とっても穏やかで滑らかで、強い印象は少ないものの大変くつろいだ音楽です。

  • どんな時に聴くとよい?

リラックスしたいときには是非お勧めです。とても爽やかな印象で、泣きたいときに聴くと優しく慰められるような気持になるかもしれません。

I. 夜明け-踊り

ディーリアスの音楽はなんとなくぼやけている、はっきりしないという意見の方も多いかもしれません。私も彼の曲には鮮烈な印象というものが含まれていないと感じます。しかしそれは彼の未熟さではなく、むしろ狙いだったのではないでしょうか?もやのかかったような音響の中に美しい音楽的な瞬間(流れ)があなたを待っています。イギリス出身ではあるものの、欧州の生活で身に着けた雰囲気はやはりどこかヨーロッパ的です。あまり曲に強く主張してほしくないなら最適な音楽です。

こうした音楽上の性質は人によって好き嫌いが激しく、評価は激しく上下しました。最初は理解者は少なかったようですが、かのグリーグなどとは親交がありよき理解者であったようです。指揮者のトーマス・ビーチャムが注目し、作曲者の死後に至るまでその音楽の普及に努めました。一部手を入れたりすることもあったようですが。なんにしてもビーチャムの存在なくしてはディーリアスの音楽は世に出なかったか忘れ去られていたかもしれません。

I.夜明け-踊り
薄暮の中からゆっくりと朝の光が立ち上ってくる様子はまさに感動的です。しかし、それをドーンとぶちかましたりしないのがディーリアスです。優しく穏やかに陽はゆっくりと昇っていきます。そして続けて踊りの部分に入っていきますが、非常に優美な繊細な舞曲で、歌劇「コアンガ」のラ・カリンダと同じメロディーが使われています。このメロディーは本当に美しいです。明るく生き生きとしています。

II.河畔にて
メロディアスでゆったりとした明るさと暗さの入り混じった音楽です。どちらかというと明るさが勝っているでしょうか?きらめくようなフルートの音に始まり、弦楽器で川の緩やかな流れを模したような旋律が続きます。まるで河畔であなたの隣に座って肩に手をかけてくるような親しみ深い曲です。

III.夕暮れ-農園の側で
まだ明るさの残るなかで物憂げな旋律が流れてきます。確かに口ずさめるようなメロディーがあるのですが、なんとなく印象が薄く、またそれが魅力と感じる方も多いようです。後半の部分に入ると、舞曲のリズムにのって少し田舎風の雰囲気が醸し出されます。農園の側では何が行われているのでしょうか?少しダイナミックな部分が初めて登場します。ちょっとしたお祭り?住民たちが集まって楽しみごとをしているのでしょうか。おしゃべりをする楽しい時間なのかもしれません。ほうぼうに明かりが灯り始めているようではないでしょうか?

IV. 夜に
夜明け前と同じ主題がオーボエで奏されます。再び薄闇に包まれていく情景を描写しているのかもしれません。暖かいホルンの音にのせて弦楽器が歌い始めます。すっかり夜です。でもディーリアスはそれを短調で表そうとなどはしません。メロディーはあると言っていいのかなんというのが正確なのか、本当に不思議な曲を書く作曲家です。それだけに心を動かす演奏は難しいのではないでしょうか?ホルンが活躍しますが、それも華々しいという感じではありません。静かに夜は更けて消え入るように終わります。

本当に押しつけがましいところのない音楽で、悪く言えばメリハリがないということで、聴く人を選ぶかもしれません。あれこれ考えることから解放されたいときには良いのではないでしょうか。

 

Delius: Florida Suite, Songs of Sunset, On Hearing the First Cuckoo in Spring, etc Various Artists: トーマス・ビーチャム ¥1,054
二枚組です。有名どころは抑えてあります。但し次のCDがわずかな値段の違いで七枚組なのは悩ましいですね。むしろ、一枚で「フロリダ」が入っているものがあればよいのですが、見つかりませんでした。

Delius: Orchestral & Choral Works, A Village Romeo & Juliet, Songs<限定盤> トーマス・ビーチャム 、 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 、 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 ¥1,393
上記の通り七枚組です。ディーリアスに「はまった!」となれば一番のお勧めです。が、そうなるかどうかの試金石となるCDがほしいですが見つかりませんでした。このセットの中では「高い丘の歌(高原の歌)」もお勧めです。演奏は至難だそうです。とてもそうは聴こえないのですが。特徴は「フロリダ」同様とらえどころがなく、ふっと美しいものが出現するイメージです。

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