5曲からなるピアノ組曲です。内容は以下の通り。
- 蛾
- 悲しき鳥たち
- 海原の小舟
- 道化師の朝の歌
- 鐘
どの曲も、ラヴェルの加わっていた芸術サークルの仲間に献呈されています。ラヴェルらしい非常に繊細な曲たちで、暑い夏をやり過ごすのに最適です。この中からいくつか紹介します。
第1曲:「蛾」
ひらひらと舞う蛾が最後には火の中で燃え尽きてしまうまで、と読んだ記憶があります。速水御舟の「炎舞」という絵がイメージにぴったりで、炎の周りを飛び交う蛾の様子が緻密に描かれています。聞いていると何か非常に儚い、移ろいやすいものを感じます。「炎舞」と同様やや不気味で涼しげです。
第3曲:「海原の小舟」
延々とうねる海がアルペジオ・スケール・トリルで表現されます。その中からメロディーが聞こえてきます。小舟は枯葉のように波にもてあそばれ、とても危うい感じがします。この曲はのちに作曲者自身が管弦楽に編曲しています。本人はお気に入りだったようですが、評判はいまひとつで、出版は彼の死後だったとのことです。
第4曲:「道化師の朝の歌」
一番有名な曲だと思います。この曲も管弦楽編曲されていて、そちらの方もピアノ曲同様よく演奏されます。「朝の歌」というのは「夜の歌」つまりセレナーデに対する言葉で、愛を歌う曲です。中間部に出てくるテンポの遅い部分が「朝の歌」に相当します。前後の速い部分はそれにまつわるドタバタとした情景描写になっていて、5曲中唯一コミカルな楽しい音楽です。管弦楽版の方が情景はわかりやすいですが、愛する人の窓辺に梯子をかけて登っていくものの、するすると滑り落ちてしまったり、周りの喧騒に邪魔されたりと、道化師らしく一筋縄ではいきません。
ピアノ曲についていえば、どの曲も高い演奏技術を要求されます。試聴機の「蛾」の楽譜を見ていて、どこを弾いているかよくわかりません。「道化師の朝の歌」を除いて、非常にストイックな印象を受けます。聴いていて楽しくないかと聞かれれば、そんなことはないのですが、いずれも内省的な印象を受けます。そのことが音楽をどことなくひんやりと涼しげに感じさせているのではないでしょうか?
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