陽が短くなるとどうにも気が滅入っていけません。ご紹介するのはドビュッシーのまさに音による映像。全体に明るさと楽しさが漂っています。
この「映像」という一連の作品。ちょっとややこしいことになっています。すでに第1集はご紹介しました。ピアノのための3つの曲からなっています。第2集も同じです。ところが第3集はオーケストラ曲です。それで「管弦楽のための映像」と呼ばれることもあります。そう呼ばれることの方が多いかもしれません。そしてこの曲集は「ジーグ」「イベリア」「春のロンド」という三曲からなっているのですが、なぜか「イベリア」はそれ自体が三曲構成になっているのです。今回ご紹介するのはこの「イベリア」です。
その名の通りスペインを題材にした作品で、「街の道と田舎の道」、「夜の香り」、「祭りの日の朝」の三曲からなっています。第二曲と第三曲は切れ目なく続けて演奏されます。
一曲目、「街の道と田舎の道」では威勢よく街の雑踏が描かれます。活気あふれる元気の出る曲で、「街」のちょっと気取った感じがよく表れているように思われます。リズミカルで踊りだしたくなるような気分にしてくれます。曲半ばで「田舎の道」に入りますが、グッとのどかでのんびりとした雰囲気に変わります。でも天気がとっても明るくて、華やいだ感じは控えめになりますが、「いいな~」という気分になります。「街」でモダンな馬車に乗っていたとすると、「田舎」では「荷車」に乗っている、といえば雰囲気が伝わるでしょうか?曲は楽しさを保ったまま静かに終わります。
二曲目、「夜の香り」(「夜の薫り」)では、印象派とも呼ばれるドビュッシーの面目躍如たる技量が冴えわたります。本当に夜の香りを感じさせます。これといったメロディはあまりないのですが、第一曲と同様のフレーズが控えめに使われていて、統一感を保っています。夜の暗さの中にも何か華やいだものを感じます。気分としても決して暗くはありません。ここらあたりは本当にうまいなぁと感嘆させられます。そして徐々に夜が明けていくのでしょうか、第三曲へとつながっていきます。楽譜ではもちろんどこからが第三曲か書かれているのでしょうが、夜と朝の雰囲気が交互に現れているので、聴いている分には明確な線を引きにくいです。スムーズなつなぎです。
第三曲、「祭りの日の朝」では既にリズムには活気がありますが、静かな朝から祭りの喧騒に向かって音楽が進んでいきます。この曲でも同一のモティーフが使われていて全体の統一感に寄与しています。祭りというより活気のある魚市場を連想してしまうのは私だけでしょうか?最後は目いっぱい元気よく終わります。ちょっと変わったリズムで、こんな終わり方をする曲が他にあったかな?と。思い当たりませんが。ややコミカルや要素も含むこの曲をもって「イベリア」全体が終わりとなります。イベリアの名にふさわしく欧州南部の明るい日差しを思わせる、ちょっと寂しい日本の秋にあらがって聴いていたい音楽です。
既に「海」で紹介していると思いますが、こちらは一枚。やはりブーレーズは素晴らしい。説得力があります。かつ楽しく聴かせます。オケはクリーブランド管弦楽団です。
ハイティンクの指揮もなかなかのものです。録音は1970年代のかなり前のものですが、コンセルトヘボウ管弦楽団との息もピッタリ。
フランス音楽といえばやはりこの人。こちらは二枚組になっていて、「管弦楽のための映像」全曲が入っています。他にもちょっと珍しいドビュッシーの曲が入っていますので、コレクターにもお勧めできます。フランス国立管弦楽団です。
チェリの11枚組。「イベリア」は「海」とともにCD1に収録されています。このBOXは持っていません。持っていませんがこれはぜひ全て聴いてみたいです。CD2の曲はほとんど知りませんが他は有名どころがずらり。ざっと曲目を見てください。う~ん、とうなってしまうこと請け合いです。Amazonについての下記の情報もご確認ください。
Amazonは一体どうしてしまったんだろう。音楽は配信サービスに軸足を移すことに決めたのか?CDが少ない…。これはあの11枚組のCD1と同様「海」と「イベリア」が収録されている。こちらはミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団。Towerのは「ガスタイク・フィルハーモニー、ミュンヘン」と記されているがどうやら同じもの。Amazonのこの一枚はライブであることがわかっています。Towerのは情報が少なく不明。それにしてもAmazon、中古ですとなんと¥80~となっています。送料の方が高い。
試聴した限りではゆったり目のテンポで、何かしら孤高の存在を感じさせる独自の演奏。もっとも奇をてらっているわけではないと思います。全身が音楽だったのでしょうね、チェリ。私は名盤だと思います。
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