何かが、何かが、何かが迫ってくる。マルティヌー:2つの弦楽オーケストラ、ピアノとティンパニのための二重協奏曲

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実のところそれほど聴きこんできた曲ではありません。でもどこかで聴いていて、最近になって曲名がわかりました。そしてはまってしまいました。マルティヌーは軽い曲も書いていて、「キッチン騒動」とか、軽妙洒脱なイメージを持っていました。フランスかな?などと勝手に思っていましたが、チェコの作曲家であることを改めて知りました。どうもプーランクと混同していたような…。

この曲は私の持っていたマルティヌー感を完全にひっくり返してくれました。シリアス、沈痛、晦渋、激昂。そして、もしこの曲の構成がチャイコフスキーの弦楽セレナードにインスピレーションを受けたといわれても(誰もそんなこと言ってないと思いますが)、私には意外でも何でもありません。もっとも方向性は全く逆を向いているのですが。

第2楽章 ラルゴ

 

ピアノとティンパニが入っているので、ある意味打楽器の持つアタックの強さが前面に出ています。チャイコフスキーの弦楽セレナードには鋭い面もありますが、全体に温かさ、柔らかさが目立ちます。対するマルティヌーは、かなり重苦しい感じを受けます。試聴機の第2楽章、ラルゴはやや取っつきにくい楽章かもしれません。

第一楽章はティンパニの一閃、躍動感をもって始まります。二群に分かれた弦楽合奏が交互に類似のパッセージを演奏するために、ステレオ感が半端ありません。音が左右に飛び交う印象です。

第2楽章の入りは、まさにチャイコフスキーのセレナードの入りです。このモチーフは第3楽章の終盤でも用いられます。その辺りも似ています。全体にピアノのソロはありますが、ティンパニのはありませんね。縁の下の力持ちに徹しています。ステレオ感は更に強力に。気分はチャイコフスキーのと違って重苦しいですが、何か得体のしれないものがじわじわと迫ってきているようです。ちょっと怖いかも。

第3楽章も依然としてアップテンポの軽快な曲です。そして最後の方で第2楽章の入りのメロディーがゆっりと繰り返されます。この辺りがチャイコフスキーと構成的に似ている感じですが、弦楽セレナードが勢い良く終わるのとは違って重苦しい雰囲気を湛えたまま力を失っていくように曲が閉じられます。

文章にしてしまうと、この曲の持っている魅力がうまく伝わらず、かえって暗く陰湿な感じと思われるかもしれません。でも決してそんなことはありません。非常にシリアスで、「ながら」ではなく、真剣に曲に対峙することが求められますが、そこから得られる深い感動はなかなかに心を打つものです。

なお、名曲ではあるものの、あまり録音される機会がなく、現在入手可能な音源は限られています。私の所有しているものはTower Recordでは見つかりませんでした。廃盤になっているものもあるようですので、入手しやすいものということでご了承ください。

 


Smetana, Dvorak, Martinu, Janacek / Rafael Kubelik ラファエル・クーベリック 、 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 、 フィルハーモニア管弦楽団 ¥1,762

一枚組で入手しやすいものといえば、こちら。ヤナーチェクのシンフォニエッタやスメタナの「売られた花嫁」の一部などが収められていて、お得感があります。

 


Charles Mackerras – Life With Czech Music: Janacek, Martinu [4CD+DVD] チャールズ・マッケラス 、 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 、 プラハ放送交響楽団 、 プラハ・フィルハーモニック合唱団 ¥5,039

チェコの音楽にどっぷり浸りたい向きにはこちら。マッケラスの振る五枚組です。

 

HMVジャパン

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歌劇『アリアドネ』、二重協奏曲 ネトピル&エッセン・フィル、シャトゥロヴァー、アンデルザノフ、他 会員価格(税込)¥2,246

こちらは全くの未知数です。ですがこの盤が今一番出回っています。どちらかというと「アリアドネ」の方がメインのような感じではあります。その中で安価なのがHMVの会員価格です。

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