全体としてはヘ短調の気持ちやや重い曲です。冬の厳しさを感じます。しかし三楽章形式の第2楽章、緩徐楽章がなんともいえず温かく心をとろかします。ビバルディの「冬」もそうですが、協奏曲の緩徐楽章は何という美しさを湛えているものなのでしょう。モーツァルトのクラリネット協奏曲しかり、バーバーのピアノ協奏曲しかり。まさに作曲家の腕の見せ所なのでしょうね。
この協奏曲は全楽章合わせても10分足らずの短い曲ですが、さすがはバッハというべきか密度の高い澄み切った音楽です。非常に聴きやすい、と言うと語弊がありますが、小難しいことを考えなくても素直に聴くことができます。もちろんバッハの時代ですから独奏楽器はチェンバロだったわけですね。
と、ここでこの曲について詳しくないのでWikiを見てみたところ、原曲はヴァイオリン協奏曲(消失)だそうで、その曲がバッハ自身の手になるものかは不明とのこと…。ちょっとびっくり。「さすがはバッハ」などと書いてしまいましたからね。でも協奏曲にまとめたのはほぼバッハに違いないということでしょう。さして昔のことではないと思うのですが人間の一生は短いですから。すぐわからないことだらけになってしまいます。
さらにWiki情報ですが、甘美な第2楽章はカンタータの「わが片足すでに墓穴に入りぬ」のシンフォニアなんだとか。まあ…、その辺はあまり気にせず美しい響きに癒されればいいと思います。
下記は推薦順というわけではありません。個人的興味のグールドと、ちょっと珍しい音源、そして定番、ということになるでしょうか。やはり協奏曲第1番が最もメジャーなのかなぁ。少々選択に苦慮いたしました。
この二枚は同じ録音と思われます。新しく出版されたものの方が若干高いですが送料を考えると逆転するので、買い合わせで選択です。
ちょっと高いのですが、二枚組で1~7番までを網羅しています。宣伝文句がすごいですね。確かにピアノのような表現のできないハープシコードでは技巧を駆使した装飾がものをいうのですが、それがばっちりと「はまった」ということなのでしょう。
こちらには第5番は第2楽章のみ含まれています。ケンプ編曲のピアノソロ版です。ケンプ自身が弾いているCDもありますのでご関心のある方は探してみてください。こういうコンピレーションもなかなか良いかもしれません。最後にバルトークが入っているのが「何だろう?」という感じですが。
お後は鉄板。チェンバロならこの人で決まりでしょう。弾き振りです。4台のチェンバロの協奏曲も含まれています。
最後はピアノで聴くなら…。実はグールドがいるのであまり聴く機会はないのですが、内面も外面も技巧は素晴らしいと思っています。ややゆっくり目のテンポで、しかし着実にバッハの世界を広げて見せてくれます。以前にこの人のピアノのレッスンを見ていましたが、内面に重きを置いているようで、高い技巧はひけらかさないタイプと見ました。Towerでは一部を聴けますから気に入ったらどうぞ。
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