以前に交響曲第8番を紹介しました。今度は第9番です。こちらは非常にメジャーですし構成が非常にはっきりしていて聴きやすいので「入門」としてみました。例えばブラームスの交響曲第1番も名曲ですが、構成がやや複雑で最初に聴くと少し退屈するかも。もちろんライブで聴けばそんなことはないはずですが、不思議なことに録音されたものを聴く場合には、何度も聴いて好きになる、ということが往々にしてあります。
前置きはこのくらいにして、「JAWS」のようなイントロが終わると、誰もがどこかで耳にしたことがあるメロディーの第4楽章をどうぞ。
小澤征爾の指揮で。
「新世界」とは作曲当時の視線からみたアメリカ(大陸)のことです。「より」と書いてあるので私は子供の頃はてっきり交響曲の「抜粋」のことかとしばらく勘違いしていました。アメリカの音楽院の院長として滞在していた間に作曲されました。弦楽四重奏曲「アメリカ」もそうですね。
この曲はアメリカの現代で言うところのいわゆるゴスペルから引用して作曲されたと思っていたのですが、Wikiを見るとそういうわけではなく、故郷のボヘミアの音楽に似ていることに触発されて作曲したようです。新世界アメリカからボヘミアへ思いを馳せて、ということかもしれません。
第一楽章は静かにひっそりとはじまります。そして弦とティンパニーによる強奏によって音楽が動き出します。そして第一主題が朗々と歌われます。ここではこの分散和音的な旋律が骨組みとなって構成されています。それが静まると次に温かな第二主題が奏されます。物柔らかくて心地よい部分です。それが一度盛り上がって一段落しますが、楽譜ではここに繰り返し記号が書かれていますが、ほとんどの指揮者はここを繰り返しません。そのまま二つの主題を組み合わせた展開部に進みます。ここは本当に絶妙で、第二主題がトランペットによって高らかに吹き鳴らされたり、短調に変換されたり、第一主題が木管で繊細に演奏されたりして、比較的少なめの要素を用いて作曲されているので全体の構成がつかみやすく、言い換えれば飽きにくいです。この楽章は最後は静かになっていき、短調で奏される第二主題が囁くように引き延ばされると、突然ナイフで切ったように(?)強奏でおわります。
第2楽章は「家路」の名で編曲されていたりするので必ず聴いたことがあるはずです。それが第一主題です。イングリッシュホルンによるぽかぽか温かいメロディーです。何か夕暮れに帰宅する子供たちの気持ちのように感じるのは私だけでしょうか。続く第二主題は短調で物寂しさの中にやさしさがあります。大変リラックスする部分です。最後は第一主題が帰ってきて静かに終わります。
第3楽章はスケルツォです。風情の違ういくつかの主題が現れては消えていきます。それは少し厳しい感じだったり、優しい田園風景のようであったり印象は様々です。ですが、それぞれの区分がはっきりしているので構成はわかりやすいです。私はこの中のアメリカ民謡風のメロディーが好きですが、皆さんはどんな感想をお持ちになるでしょうか?
第四楽章は試聴機で聴けるものですが、「JAWS」というのは冗談として、最初から力強くリズミカルな弦楽器で始まります。そして第一主題がホルンとトランペットで勇壮に吹き鳴らされます。この最初の部分は様々なメロディーが流れますが統一感があり、ひとまとまりとして捉えやすいです。続く第二主題となる部分は再び優しい旋律です。低弦の穏やかな伴奏に支えられて安定した面持ちです。これらに加えて第2楽章、第3楽章の旋律が加わり交響曲全体としてもよく構成されていることがわかります。最後は第一主題が静かにティンパニーのリズムに乗せて演奏されると、いきなりの盛り上がりを見せて弦楽器に引き継がれます。変形された第一主題がファンファーレのように吹奏されるとテンポが上がり熱狂的な連打のうちに曲は終わります。興味深いのは最後の音は「ジャン」と終わるのではなく「ジャーーン」とフェルマータがついており、デクレッシェンドして最弱音になることです。ここまで盛り上げておいてからの最弱音は他ではあまり知りません。が、これが何とも言えない余韻を残してくれます。
数多の指揮者が演奏した録音がありますので好き好きだと思いますが、私は例によってカラヤンが好きです。東欧の指揮者が良いと思われる方もおられることでしょう。
先にご紹介した第8番とのカップリングです。録音としても鉄板です。名曲は地域性を越えます。その良い例ではないでしょうか?
シューベルトの「未完成」とのカップリング。ライブ録音です。いわゆる伝説のライブです。
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