時代に先んじ過ぎた?ショスタコーヴィチ:交響曲第4番

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ショスタコーヴィチといえば代表曲は第5番。当然それ以前に発表された曲と考えるのが普通ですが、作曲されたのは1936年ころと思われるのに初演は1961年。なんと25年ほども後のことなのです。第5番の初演が1937年ですから、いかに発表が遅れたかがわかります。

実はショスタコーヴィチは1936年に発表したオペラとバレエでソビエト当局の批判を受けて非常に危険な立場にいました。おそらく独裁者のお気に召さなかったのだと思います(ソルジェニーツィンの著作の中で、独裁者が「第5番」を聴きながら心の中で快哉を叫ぶシーンがあります。心の中なのであくまでもフィクションなのでしょうが、まさに作曲者の首がつながった瞬間です)。当時のソビエトではこんなことで粛清されてしまうことが珍しいことではなかったのです。欧米の影響を受けていると判断されただけでも批判の槍玉にあがります。ショスタコーヴィチは何とリハーサルまで終わっていたこの曲の楽譜を回収し、初演を断念します。身の危険を感じたからでしょう。さて一体どんな音楽だったのでしょうか?134名の大所帯です(彼の最大規模)。

狂ったように疾駆するフーガ(フガート)。これでも指定のテンポより遅いらしい。

一言で言えば「前衛」?いや、そんな簡単に片づけられるものではありませんね。3楽章形式で書かれています。始まりは中庸のテンポでいかにもショスタコーヴィチという感じです。そしてこれがどう展開してくのかなあ、と思って聴いていると全然展開していかない。足踏みをしているように曲が前に進んでいきません。と思うと突然曲調を変えてスローテンポになったり、試聴機で聴かれるような、指定のテンポでは演奏不可能ともいわれる高速フーガ。この曲もかなりの集中力をもって聴くことを要求しています。

第2楽章は比較的おとなしい舞曲ですが、作曲当時の人が聴いたらかなり前衛的に聴こえたはず。美しい部分も十分にあるのですけれども。この楽章の結びは、交響曲第15番の終結部分でも引用されているもので、機械式時計のようにカチコチと時を刻みながら人を食ったような終わり方をします。

第3楽章は葬送行進曲風に始まり、それがやや盛り上がってきたところなど、ショスタコーヴィチらしい、つまり「第5番」を彷彿とさせる古典的な響きにいったんは至ります。再び葬送行進曲の主題が戻ってきますが、全曲を通して言えることですが単純な繰り返しはほとんどありません。あ、繰り返すのかなと思うと突然曲調が変わります。ついて行くのが大変ですが翻弄される楽しさもまたそこにはあります。再び速度を上げていった後また静まり返る、といった流れで「カッコよさ」が十分にあります。パロディやユーモアも時に顔をのぞかせます。終盤の金管のファンファーレというか雄叫びというか圧巻の響きの中で曲を閉じるのかと思えばさにあらず。再び「第15番」のコーダと似た最弱音のロングトーンに、最後の1音が投じられてそのままひっそりと曲を閉じます。ただ「第15番」が協和音で終わるのに対し、この「第4番」は最後に投入される音が不協和音になります。何か不条理感を残して。

書いていても思うのですが「支離滅裂」だなあと。それなのに約一時間かかる演奏時間を飽きさせることはありません。改めて言うと集中力は必要ですが。作曲された時点で、もし欧米で演奏がなされていたならば大喝采を浴びたと思うのは私だけでしょうか?それでもまだ時代を先取りし過ぎていたでしょうか?仮定の質問なので答えは出ません。

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「支離滅裂」と書いては見たものの、ショスタコーヴィチ自身はそれまでの集大成として8か月という彼にしては長い時間をかけて作曲されたものだとのことです。パロディも含めて、その時点での彼のすべてだったのかもしれません。ではそれを発表できないという事態になったことは相当なダメージではなかったのではないでしょうか?しかし彼はそれを乗り越えて「第5番」であらゆる批判をはね返し、いわば勝利を収めたのです。


Shostakovich :Symphony No.4 Op.47 (9/7/1962)/Katerina Izmailova Suite Op.114a (9/4/1962)/Festive Overture (7/8/1985):Gennady Rozhdestvensky(cond)/Philharmonia Orchestra/etc ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー ¥1,851
ごめんなさい。推薦しておいてなんですが、現在オンラインショップ取り扱いなしだそうです。でもこれがイチ押しなんです。ライブ盤ですが物凄い気迫です。ショップで見つけたら是非。


ショスタコーヴィチ: 交響曲 第4番<タワーレコード限定> チョン・ミョンフン 、 フィラデルフィア管弦楽団 ¥1,296
そんなわけで、高評価の中でこの組み合わせなら間違いないと思われる1枚です。


【SACDハイブリッド】 Shostakovich: Symphony No.4, 5 & 6 ワレリー・ゲルギエフ 、 マリインスキー劇場管弦楽団 ¥3,356
SACDプレーヤーをお持ちならハイレゾでも聴くことができる価値ある1枚、いや2枚組です。Disc1に第4番が入っています。初録の際には第4番はレコードアカデミー賞大賞を受賞しています。その再録です。旧盤をしのぐとの声もあります。


ショスタコーヴィチ:交響曲第4番/組曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(抜粋)(フィルハーモニア管/ロジェストヴェンスキー)(1962, 1985)
ありました!アマゾンに!!中古が・・・。しかしこの価格では…。私は山野楽器で買いました。Towerとかどこかに残っているのではないかと思うのですが。画面左上の「商品の詳細ページはこちら」で通常の売り場に飛びますが、現在は在庫が無いようです。いずれ復刻されるでしょう。それにしても指揮者31歳だったとは。聴衆席に作曲者が座っていたとは。

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