あなたは海を見るのが好きですか?うららかな春の海も心地よいですし、人影まばらな秋の海も捨てがたいですね。この交響詩の第1曲はまさにそんな情景にぴったりです。
3つの交響的スケッチからなる曲で、海の様子を印象主義的に捉えた標題音楽です。
スコアの表紙に葛飾北斎の海(波)の版画が使われていて、あたかもこの版画がインスピレーションの源でもあるかのようですが、実際はやはり自分の目で見た地元の海の印象が元になっているようです。
とはいえ、当時の日本趣味の影響はいくらか感じられます。特に第1曲に。
第1曲は「海の夜明けから真昼まで」と題され、このパートには陸地に立って海を眺めている自分を感じます。薄明りのなか波がさざめき、やがてあたりはすっかり明るくなる。それから正午までということはずいぶん時間を縮めて描いているのかどうかはわかりませんが、輝かしいきらめきに至るまでの海の情景をそのまま切り取ったような曲です。
第2曲になるともはや地面は見当たらず、ひたすら海原の様子が描写されているように感じられます。「波の戯れ」と題されています。書いていてふと思ったのですが、この波は海岸に打ち寄せる波のように聴き取られた方がおられるでしょうか?そうなのかもしれません。ただ少なくとも、戯れているのは波なので純粋に海の表情を写しているように思います。画家が私たちの自然を見る目を開いてくれるように、ドビュッシーも海を見つめる新たな耳目を与えてくれるようです。
第3曲は「風と海との対話」ということで、完全に人間は排除されてしまっています。不気味な静けさから始まった曲は風の強まりとともに荒れ狂っていく海を描き出します。とはいえ、一直線に荒れていくのではなく、風も一時は静まり再び強まるので単調ではありません。
終盤の部分で2種類の演奏に分かれる箇所があります。一方は吹きすさぶ風を示すような弦楽の上にトランペットとホルンの印象的な音型がかぶさる版と、他方は金管楽器のパートを削除した版です。
どうやら最後に出版された版は後者だったようで、作曲者の最終決定はラッパなし、ということのようです。
しかし、たいへん印象的な部分であり、大指揮者たちの中にも削除する前の版で演奏する人がたくさんいます。私は最初に聞いた演奏がラッパ付きだったために、ラッパがないと少々寂しい感じがしたものです。最近はなくてもよいかなと思っています。風の表情に注意が集中するので。純然たる好みの問題になりそうです。ちなみに試聴機のゲルギエフはラッパなしでの演奏です。
話によると、この曲は演奏者たちにとってはそれほど魅力的ではないといいますか、奏でていてあまり面白くないそうです。一部の方の意見ですが。一つのパートがパズルの1ピースになっているようなものなのかもしれません。それを組み上げて一大絵巻を完成させたドビュッシーの力量は並々ならぬもの(‘しゃれ’ではありません)があると認めざるを得ません。
ドビュッシー:交響詩「海」、夜想曲 牧神の午後への前奏曲 他 ユージン・オーマンディ 、 フィラデルフィア管弦楽団 ¥1,285
オーソドックスに名演といえばこちらはいかがでしょうか?安い分、送料がかかってしまうのですが、何かと組み合わせて。
ブーレーズの分析的な演奏もまた魅力です。分析に終わらず「音楽」をしっかりと引き出すところが彼の素晴らしさだと思います。2枚組、LP3枚分の内容です。
スイスの指揮者、アルミン・ジョルダンは日本ではあまり知られていませんが、フランス音楽を得意とします。今年没後10周年とのことでフランス管弦楽作品の記念ボックスとなっています。13枚組。
こちらはマルティノンがフランス国立放送管弦楽団を指揮したドビュッシーの管弦楽曲全集。4枚組で少々お高いですがSACDハイブリッドです。SACD環境をお持ちならお勧めします。
それで、こちらがドビュッシーの有名どころを集めたアルバムです。フランス国立放送管弦楽団。
カラヤンはラヴェルとのカップリング。ダフニスとクロエは第二組曲です。
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