今年はいきなり秋がやってきました。秋は意外と雨の多い季節。夜の静寂をいささか執拗に打ち叩くように雨音が聞こえてくるのも、時には風情があります。何かと気ぜわしい生活の中で、心落ち着く良い響きです。今回紹介するのは同じように、騒ぎ立つ心を鎮めてくれる作品で、
- イタリアーナ
- 宮廷のアリア
- シチリアーナ
- パッサカリア
の4曲からなる組曲です。「リュートのための」となっていますが、これはレスピーギが古いリュートのための曲を編曲したもので、リュートは使いません。第3組曲は弦楽合奏あるいは弦楽四重奏の演奏もあるとのこと。
やさしく眠りにいざなってくれること請け合いです。
特に第3曲のシチリアーナは誰もがどこかで耳にしているはずです。
もともとがリュートの曲ということで、原曲も素晴らしいのでしょうが、レスピーギによる編曲も大変耳にやさしく、日常の喧騒で疲れた耳をいやしてくれます。
サンタチェチーリア音楽院の図書館での研究がもとになっているそうです。こういった古い時代の曲を研究して再構成するというのは、ストラヴィンスキーも行っていますし、他にも例があることでしょう。第3組曲以外、よく知らないのですが、そちらはオーケストラ用の編曲のようです。
第1曲 イタリアーナは、中低音のピチカートにのせて、これもよく知られたメランコリックな旋律が奏されます。ピチカートが終わると全体が大きな弦楽器のようになっていくらかの盛り上がりを見せます。最後の部分の伴奏はまたピチカートですが控えめな感じがします。そして明るく曲は閉じます。
第2曲 宮廷のアリアは少し重めに始まります。リュートの和声を十分感じさせながら、やや強い演奏部分もあります。次いで、曲調は明るくなり、次第に静まると再び、重厚な響きへと戻っていきますが明るさは保ったままです。続いて低音のピチカートと中高音の掛け合いが始まったと思うと、全体で明るいメロディーを朗々と歌い上げます。少し静まって、最後は本当に静かに終わります。
第3曲 シチリアーナは、ピチカートを含む中低音の伴奏にのって有名なメロディーが流れます。今度は伴奏の方にバリエーションが登場するようです。メロディーはそのままで、細かくリズムが刻まれていきます。やや力強い中間部を経て、メロディーがカノンのように扱われていきます。伴奏の細かな動きが低く、ゆっくりになってそのまま曲を閉じます。
第4曲 パッサカリアは、一種の変奏曲になるわけですが、どこが中心主題なのかよく聴き取れません。曲はテンポアップして活気を帯びていきます。下降音型の主題が繰り返されたのち、元気よく全曲を終わります。
少々お高めですが、3枚のアルバムをセットにしたものです。これから紹介したい曲目も含んでいますし、それぞれが名盤といえます。
こちらはローマ三部作とともに収められているのでお得感があります。しかも曲順が良く練られていますね。たいていはローマの噴水が最初に来る(作曲順ですね)のですが、「リュートのための」に向けて徐々に静まり返っていくように配置されています。
こちらは3つの組曲が全部入っています。お値段も手ごろですし、マリナーの演奏も確かですから、全部聞きたい!という方にはお勧めですね。現在は少しお高くなっているようです。
こちらはまた一風変わった選曲ですが、オール・レスピーギであることには違いはありません。「鳥」といってもヒッチコックではなく、これも古楽の編曲です。「風変わりな店」もロッシーニの曲を素材としていますから、オール・編曲ものといってもよいでしょう。優れた管弦楽法を発揮したレスピーギにはこんな一面もあったんですね。故きを温ねて新しきを知る、でしょうか?
言わずと知れた、イ・ムジチ合奏団の演奏集。ニノ・ロータの弦楽協奏曲やエルガーの弦楽セレナードも収録されています。安らぎのひと時を過ごすのにどの曲もお勧めです。