この曲はもう少し後に紹介するつもりでした。それが早まりました。
なぜか?それは私が中学生の時にリリースされた名盤LPがCDとなって販売されていることに気付いたからです。
今のCD業界は、まず新作を出して様子を見、販売が思わしくなければ内容にお構いなく廃盤。良いものはしばらくして数量限定復刻。そしてボックスセットに収監(?)する、という、リスナーには大変良くない流れになっています。
確かに時代はデジタル。CDもデジタルですが場所をとる。売れないものを抱えているのは大変。その点、ストリーム配信やダウンロード販売ならコストがぐっと抑えられます。アルバムの中の好きな曲だけ買うことができる場合もあります。でも、SP、EP、LP時代の人間には何かしっくりこない。それは手に取り目に見えるものがないからではないでしょうか?
前置きが長くなってしまいました。名盤を紹介しようにも廃盤になってしまっているのでつい、愚痴ってしまいました。廃盤にならないうちに紹介しなくては。
この交響曲は初演後にすぐ作曲者が亡くなったので、同時代の人々には大きなインパクトを与えました。
第一楽章は非常に暗い印象で幕を開けます。このメロディはベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」と酷似しています。テンポは非常にゆっくりですが。これが意図的なものかどうかはわかりません。そしてこの主題をテンポを速めた弦楽合奏が聞かれます。木管楽器との掛け合いなどを経て悲しみの高まっては抑えられ、金管楽器、打楽器も加わりこのまま号泣に至るのかと思うと、徐々に静まって穏やかな優しい旋律へと引き継がれます。
クラリネットの優しい響きで慰めるように曲が閉じるのかと思う刹那、突然の大音量で苦しみとの戦いが始まります。ここは聞きどころです。最終的には金管・木管楽器でやや温かみのある響きで第2楽章に気持ちを引き継いでいくあたりは作曲者の本領発揮といったところです。
第2楽章は舞曲です。五拍子の舞曲ですが全く違和感を感じさせません。なんとなく聞いていると三拍子のワルツと思ってしまうかもしれません。雰囲気は比較的明るく、時々哀愁に満ちたフレーズが流れ込んできます。そして静かに終わります。
第3楽章はいわば勝利の行進曲。出だしこそ最弱音で弦楽器が細かな音型を演奏しますが、この楽章でも木管楽器、金管楽器という具合に加わってきてオーケストラ全体が鳴り響くようになり、弦楽器と木管楽器のスケールのやり取りの後、豪快な行進曲風となります。まさに歓喜の絶頂です。ここで終われば第5番の交響曲と似た構成になります。しかし・・・。
悲哀に満ちた第四楽章が始まります。なぜ?何があった?と問いたくなるような音楽です。それでも響きの美しさはしっかりと保たれています。各楽器の使い方はさすが名人といえます。ここでも盛り上がりと抑制が絶妙に仕組まれいて、いつしか叫ぶような慟哭へと進んでいきます。その後は何か淡々としたゆっくりと歩みを進める雰囲気になり、かすかな慟哭の余韻を繰り返しつつ、消え入るように終わります。
最初に述べたLPはクラウディオ・アバド指揮、ウィーンフィルハーモニーの演奏で、ざっと計算してみるとアバド40代の録音です。指揮者としてはひよっこではないでしょうか?しかしどうしてどうして、この演奏はこれまで聞いたCDの中でベストといっても過言ではないのです。
特に私が胸を打たれたのは第一楽章の中で、弦楽器がトレモロで伴奏する中を低音金管楽器による雄叫びのような慟哭の旋律を演奏する部分です。なんとここには二つの時間の流れがあるのです。弦楽器はまさに時の流れを刻むように正確に進行するのですが、トロンボーンなどの金管楽器による叫びは弦楽器の時の流れを振り切るように独自の時間を刻んで走り出してゆくのです。それでいてリズムがばらけるのかというとそんなことはありません。他でこんな演奏は聴いたことがありません。
若さゆえの統率ミス?決してそんな筈ないです。指揮者のつもりになって腕を振っていると「あれ?」となるのですぐ気が付かれると思いますが、それでも全体は緻密に正確に進んでいくのです。
慟哭が時の流れに逆らっている、振りほどこうとしている。そんな風に聴こえました。
もちろんほかにも聴きどころたくさんです。
ではCD紹介、行ってみましょう!
その前に。これは心の健康状態が良い人が「泣きたいのに泣けない」、といったシチュエーションで聴くのが良いのかなと思います。すなわち、自分が立ち直れることを確信している人向けですね。 心が折れた時に聴くような曲ではないかもしれません。
音楽が心に及ぼす影響は決して侮ることはできません。このサイトで紹介している曲の中に、気持ちをアップするのに適切なものを見つけていただければ、こんなうれしいことはありません。
チャイコフスキー:交響曲第6番≪悲愴≫<初回プレス限定盤> クラウディオ・アバド 、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
絶対お薦めこの一枚(1,728円)。・・・ですが既に終了。下記の3枚組でお楽しみください。
今はこちらしか入手が難しそうですね。ジャケ写を信じるならば(解説も確認はしましたが)、上記を含む3枚組です。(2,571円)
シカゴ響との後年の演奏も聴いてみたくなりました。
Tchaikovsky: Symphony No.6, Manfred Symphony, Romeo and Juliet, Capriccio Italien ¥1,827
と思ったら、意外なところに伏兵あり?チャイコフスキーの作品をいくつか扱った中で、悲愴とロミジュリはアバドがウィーン・フィルを振っていてまさにあの第6です。とはいえこちらももはや在庫わずか。と思っていたらあっという間にお取り寄せです。なかなかバランスの良い選曲であると思います。
あまりにも安かったのでつい。もちろんムラヴィンスキーにも名盤があるのですが、前置きに述べた通り大人の事情で入手困難。(1,069円/セール877円)
二枚組なので5番が分断されるのが惜しいところ。「悲愴」には影響しませんが。これは恐らく名演です。一風変わった5番を聞けるかもしれません。恐らくというのは録音数が多くて、自分の意図したCDかどうか確認するのが難しいからです。(2,407円)
こちら、Blu-ray Audioですのでご注意を。録画機も普及していると思いましたので。ただし、対応機種でないと聞けません。音は良いはずです。(3,780円)
リマスター版、カラヤン指揮、ベルリン・フィルです。(1,512円)
こちらには、くるみ割り人形の組曲が入っています。「悲愴」で終わるのがつらい方にはこちらをお勧めします。(1,234円)
ロジェストベンスキーの「悲愴」です。指揮者は違いますがこちらもくるみ割り人形が入っているので、後が楽になるでしょう。(1,501円/セール1,231円)
スヴェトラーノフ没後10年記念- チャイコフスキー:交響曲全集 エフゲニー・スヴェトラーノフ 、 ソヴィエト国立交響楽団
いっそのこと全集を買ってしまうというのはいかが?こちらは在庫わずかです。(5,143円)
同じ内容ですが発売年は遅く、現在は在庫わずかとのこと。(5,400円)
大推薦のCDです。これがジャケ写になります。(中古に混じって新品もあります。送料を含めて2,000円くらいかと)
こちらででは6番のみより3曲入りのほうが安かったので。ただし、二枚組ゆえ5番は分断です。(2,384円)
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 スラヴ行進曲 [ クラウディオ・アバド ] こちらは異なる演奏です。シカゴ響との後年の演奏になります。 |
チャイコフスキー:交響曲第6番≪悲愴≫/バレエ組曲≪くるみ割り人形≫ [ ヘルベルト・フォン・カラヤン ] 楽しい気分に戻りたい方に |
チャイコフスキー:交響曲第6番≪悲愴≫ 幻想序曲≪ロメオとジュリエット≫ [ ヘルベルト・フォン・カラヤン ] 余韻に浸りつつ、穏やかな気持ちになりたい方に |
今回のYahooショッピングは送料無料にこだわってみました。
ロミオとジュリエットも悲劇ですが、この曲は心を温めなおします。急にスラブ行進曲だと「段差が大きすぎて」という方にお勧め。(1,296円)
いっそのこと4,5,6と揃えてしまっては?
この三枚組の良いところは、「曲が分断されない」「各CDに組曲などが同梱されていてお得」等です。(2,359円+送料)
チャイの交響曲6番はなんといつても58年録音カラヤン,フィルハーモニア管弦楽団(エンジェル)でしよう。第一楽章 コントラファゴットのピアニッシモ の 後 一瞬の間をおいて いきなり立ち上がるフオルテツシモのスリル、速すぎないテンポ、更に自然な音のバランスなど一番の演奏です。(冒頭部分の大きい音はそのニュアンスをよく伝えようとするエンジニアの気持ちの表れですねん!)どや?以上。
コメントありがとうございます。聴きどころですよね。早速手配し、、、ようとしたのですが、カラヤン、フィルハーモニアの58年録音が見つかりません。もしかするとこちらでしょうか?
http://tower.jp/item/2166138/TCHAIKOVSKY%EF%BC%9ASYMPHONY-NO-6-SWAN-LAKE-SUITE%EF%BC%9AHERBERT-VON-KARAJAN(cond)-PHILHARMONIA-ORCHESTRA
詳細が書かれていないのですが、ジャケットにはエンジェルが描かれています。とすると廃盤ですね・・・。同じ組み合わせで、悲愴が55年、「ロミジュリ」が60年とクレジットされているものを手配してみました。廉価版で。んー、でも録音年がはっきりしているということは違う演奏でしょうか。とても心配。
でも初コメントをいただけてとてもうれしかったです。どしどし突っ込みを入れてくださいませ。
こうちやんさんのお勧めと違う可能性が高いですが、1955年版のフィルハーモニア管「悲愴」をようやく聴けましたのでレビューします。「最初期ステレオ(Early Stereo)」なる不明な注記がついておりますが。第一楽章は全体的にどっしりと遅めのテンポ。気が付いたのが、木管楽器の細かな動きが手に取るようにわかります。他の楽器もそうですが、分離がいいですね。さてppppppという異常な弱音指定の付いたファゴットの直後のffの一撃後も駆け出すことなく力強く突き進んでいきます。説得力あり。第二楽章中間部。軽くブレーキをかける指揮者もいますが、カラヤンはグッとサイドブレーキを引きます。絶妙。音も悪くないし本体¥370ですし、入門にも適。惜しむらくは曲間のギャップが短くて、余韻に浸る間もなくプラスαの「ロミジュリ」が始まってしまうことぐらいですね。
盤違いかもしれませんが、良い演奏に触れる機会を与えてくれてありがとうございます。