ホルストと聞いて誰もが思い浮かべるのは組曲「惑星」。では他は?あまり出てこないと思います。
ご紹介します「組曲第1番」は「バンドのための」と銘打たれている通り、いわゆるブラスバンド、ブラバンが演奏します。最初に聴いた時は「軍楽隊のための」とアナウンスされていました。要は基本、弦楽器がないのですね。
とてもカッコいい曲です。シャコンヌ、間奏曲、マーチの三曲からなり、一曲一曲のクオリティが高いです。
シャコンヌは低音部で主題が演奏され、それが繰り返されながら他の楽器が加わっていき、主題の上にさらにメロディが追加される、と言ったらよいでしょうか。バッハのシャコンヌやパッサカリアと同じ形式です。
曲は日の出を思わせます。あたりがうっすらと明るみを帯びていくように徐々に力を増していきます。曲の中間では主題が楽譜の上下(高低)をひっくり返したものになり、雲がかかったように一時的に暗くなりますが、再び太陽が輝きすっかり顔を出して大地をくっきりと照らし出します。といったイメージを持ちました。ちょうどドビュッシーの「海」の第一部を短縮したようなダイナミックな変化、といえばわかりやすいでしょうか。全曲ともそうですが、キレッキレの作曲技法ですね。
間奏曲は、どっしりとしたシャコンヌから一転、軽快な伴奏に乗ってコルネット(見た目はトランペットと区別しにくいですが成立は異なります。ゆえに音色に違いが出ます。吹奏楽では重要な楽器です)が、その独特の柔らかい音色で主題を演奏します。間奏曲にふさわしく短めの曲ですが木管楽器などかなりテクニックを要求されます。それでも学生たちが好んで取り上げますので無理な書き方はされていないのでしょう。軽妙に曲は閉じます。民謡からインスパイアされているのかもしれません、とても素朴です。
マーチは組曲の終曲にふさわしい堂々たる行進曲で、イントロ、複数の主題、中間部、そして最後は主題のメロディや中間部のメロディなどが組み合わさって溶け合って最高潮へと突き進んでいきます。そして短いコーダ、これもまたカッコいい。ちょっと「木星」を思わせます。
実は中学・高校と吹奏楽部に所属していまして、高校生の時にこの曲を演奏会に出しました。
日本におけるいわゆるブラスバンドはクラシックと別の世界のようで、吹奏楽曲の著名な作曲家も一般クラシックファンにはほとんど認知されていません。また、クラシカルの作曲家で吹奏楽曲を書いている人もあまり知られていません。
そんな中でホルストは際立った存在です。もっとも「惑星」と「組曲」以外にどんな曲があるか、即答できる人は少ないでしょう。私もです。「どこまでも馬鹿な男」という曲があることだけは知っています(なんという題名でしょう!)。
ホルストは組曲を第二番まで作曲しました。こちらはカッコいいというより、田舎の風景を思い起こさせる素朴な曲ぞろいです。曲数は多いものの盛り上がりが第一番には負けています。楽しいですけどね。
話を元に戻すと、なぜにブラスバンドはクラシックと乖離してしまったのでしょうか?思うに「コンクール」の存在が大きいと思います。「ブラバン甲子園」というアルバムもあるそうですから。
加えて、弦楽器の人数を(楽器も)そろえるのが難しいため、管弦楽部の存続が困難という事情もあるでしょう。
吹奏楽曲の中には名曲の名に値するものが数多くあるので、オーケストラも時には弦楽セクションが休憩して演奏してくれたらいいですね(楽器編成はそう単純なものではないですが)。とにかくこの不可思議な壁を何とか取り払っていただきたいものです。
推薦盤に行ってみましょう!
British Band Classics フレデリック・フェネル 、 イーストマン・ウインド・アンサンブル
まずはこのアルバムをもってして名盤といえるでしょう。(2,257円/セール1,851円)
二枚組で、一枚目は吹奏楽オリジナル、二枚目は管弦楽編曲版となっています。定番といえます。(3,240円)
再びフェネル。ヘンデルやバッハを含めたのが特徴です。(2,041円/セール1,674円)
三度フェネル。ぐっとフォークロアに寄った選曲です。(1,234円)
名オーボエニストの指揮者デビュー盤。(3,086円)
高いと思ったのですが…。6枚組でこの値段。ホルストを極めたい向きにはお勧めです。(3,013円/セール2,471円)
こちらタワーレコードと同じものです。(3,420円)
こちらもタワーレコードと同じです。(1,048円)
こちらもタワーレコードと同じです。(3,118円)
これは「ブラスの祭典Best」のうち、バンド・オリジナル曲の入ったDISC1に相当するようです。クラシックは管弦楽で聞けばよい、という方はこちらが良いかもしれませんね。(2,816円)
その他の推薦盤がありましたら追記いたします。
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